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ミステリの祭典

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ABO殺人事件
幻想探偵社シリーズ

作家 清水義範
出版日1984年12月
平均点4.50点
書評数2人

No.2 6点 メルカトル
(2023/04/04 22:38登録)
表題作が長編で、他短編二作の連作作品集。
いずれも途中までは本格ミステリだけど、最後にSFになるという変わり種です。その中でも特筆すべきはやはり表題作で、様々な趣向がてんこ盛りの読者サービス溢れる佳作だと思います。二人の探偵の推理対決とそれを見守る警部補という図式がなかなか興味深く読めます。所謂多重推理であり、その後のミステリに与えた影響は結構強い気がします。又、警部補も意外にもなかなかの切れ者で、警察の捜査にも一応敬意を表しているのが好ましく感じました。

作中で宇宙のプリンセス的な存在だという探偵事務所の女性と、語り手の探偵との出会いがどんなものだったか分からないのが気になりました。当然シリーズ一作目から読みなさいって事ですが、彼女の不可解さがどうにも頭にこびりついて離れないのが難点でした。
まあ全体的に面白かったと言えるでしょう。合格点です。
尚、クリスティの『ABC殺人事件』のネタバレをしていますので、念のためご承知置きを。

No.1 3点 江守森江
(2010/06/22 08:31登録)
表題作を含め3中編収録。
冒頭から読者を惹きつける圧倒的な謎で「本格ミステリ・フラッシュバック」でも紹介されているソノラマ文庫(ジュヴナイル)作品。
作者の本質は推理作家ではないと思うし、少年向けな緩いSFミステリーだと最初から認識して読めば楽しいのだが(表題作には読者への挑戦らしき文言まであり)本格ミステリとして読むとルールの明示と運用に大きな不満を感じてしまう。
「本格ミステリ・フラッシュバック」の作品選定にも不満が波及する悲しい作品でもある。
逆に、後続作品に与えた影響を考えれば、SF設定ミステリの失敗作見本として存在意義は大きい。

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