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ミステリの祭典

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ミステリが読みたい!2008年版
早川書房編集部編

作家 雑誌、年間ベスト、定期刊行物
出版日2007年11月
平均点3.50点
書評数2人

No.2 5点 Tetchy
(2010/06/27 18:04登録)
とうとう海外ミステリ出版の老舗早川書房がこのような年間ベストランキングムックに手を出したのかと複雑な思いがした。
もともと早川書房は古くからミステリマガジン誌上で年間ベスト本のアンケートを募り、毎年3月号に各選者のコメントを載せていたが、今回のようにそれらに点数を付加してランキングを作るなんて事はしなかった。しかし、今回から編まれた本書ではベスト本選出に関しては従来の3冊選出を踏襲しているが、他のランキング本にあやかるかの如く、同様のランキングを作っている。
つまりこれはこれらランキング本が引き起こす本の売り上げが無視できないほど出版界では大きい物になっている事を物語っている。そして不況に喘ぐ出版界では今、どうにか利益を上げようと必死なのだ。

そしてそれを裏付けるのかのように本書のベスト1は当の早川書房が出版した村上春樹による新訳、チャンドラーの『ロング・グッドバイ』である。
この結果については特に早川書房が自社の作品の売り上げを伸ばすために作った自作自演ランキング本だ!といった痛烈な批判がその大半を占めていたように思う。

で、その感想は意外とまともだったという事だ。ミステリマガジン誌上のアンケートの延長といえばそれまでかもしれないが、個人的には原尞、小鷹信光、山本博御三方による公開鼎談が収録されているのが収穫だった。
他にこのランキング本の特徴としては、他のランキング本が予め出版社側で選定した書評家、作家、ネット書評家と限られた人間のみなのに対し、この本が不特定多数の読者も対称にしていること。それゆえ、ランキング参加者数は日本ミステリが127名、海外ミステリが93名と他のランキング本と比しても圧倒的に多い。これは本書の強みであると感じた。

しかし、上にも述べたように、中身はやはりミステリマガジン3月号の延長に過ぎない。特に本書の約4割近くを受賞リストや索引に費やすのはいかがなものだろうか?この辺は従来の作りを忠実に作りすぎた感があり、工夫が欲しかったところだ。

しかし早川書房からベスト本アンケートをお願いされて早川書房の作品を1作も入れないなんて、自ら仕事を失しようとしている行為のように思えてならない。そういう意味ではやはりこのムックに公平さを求めるのは無理を感じずにはいられない。

No.1 2点 江守森江
(2010/06/20 05:37登録)
本来なら年刊雑誌なので採点は一律の3点だが、出版意義が老舗ミステリ出版社としての会社のメンツとしか思えない不快感に最低レベルのミステリーと同じ2点とする。
初期の「本ミス」以上に地味な構成の雑誌で「このミス」とミステリーの範疇が近い事を考えればランキングはネット発表か従来のミステリ・マガジン内での発表で良かったと思う。
しかも、後半は単なる作品目録でしかない。
私的に、早川書房とはミステリ嗜好が相容れず平行線だと確実に認識できた事は良かったのだろう。
それにしても早川書房は、マトモナ国内ミステリーを出版していず、依怙贔屓で一作だけランクインする国内と、依怙贔屓と販売戦略を兼ねて上位を席巻する海外翻訳との落差は如何ともし難い。
いっそのこと販売ツールとして出版に踏み切ったのなら海外翻訳ランキングと解説に特化し「本ミス」と住み分けすれば良いのに!と痛感する。

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