このミステリーがすごい!2008年版 |
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作家 | 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 |
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出版日 | 2007年07月 |
平均点 | 5.00点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 6点 | Tetchy | |
(2010/06/26 21:38登録) 20周年記念号でもあるこの年の投票ランキング結果は正直意外だった。 なんせ佐々木譲である。 『このミス』初期の常連であったが、『昭南島に蘭ありや』以降、ランキングからは姿を消しており、昨年警察物でランキング復活したかと思えば、今年いきなりの1位獲得である。この『警官の血』、解説を読むとスチュアート・ウッズの名作『警察署長』のもろ本歌取りである。もちろんオリジナリティも加味されているからこその支持だろうけど、この『警察署長』が訳出されたのが1987年だから、最近のミステリ読者でこの作品を読んでいる人は少ないのかもしれない。良い物は何年経っても支持される、つまり名作の歴史は繰り返されるということなのか。 その他ランキングはやはり桜庭一樹が旬ということで上位にランキング。有栖川有栖のなんと15年ぶりの江神シリーズ『女王国の城』も3位と大健闘しているのがちょっとビックリ。宮部みゆき、歌野晶午もランキングしており、また新進気鋭の道尾秀介もどうにかランクインとなかなかバランスよく分散されているのではと思った。しかし発表当時世評高かった伊坂幸太郎の『フィッシュストーリー』がランク外だったのはちょっと意外。 で、海外はとうとう常連ジェフリー・ディーヴァー1位獲得である。そして2位にハイアセン(!?)、さらにディヴァイン、ゴアズ、ウォルターズ、ヒルにクック、そしてローレンス・ブロックと往年のランカーが勢ぞろいし、さらにその間を縫うように最近評価の高いマンケル、アルテ、ジャック・カーリイ、サラ・ウォーターズが食い込むといった当方にとって非常に気持ちのいいランキングとなった。海外ミステリ不況といわれるがこれを見るとまだ安泰。いやむしろ真の海外ミステリファンによる支持票という色合いが出て、非常に面白かった。 とまあ、ランキングに関しては、納得できる反面、内容についてちょっと首を傾げざるを得ない。 今までの恒例の特集である「座談会」、「わが社の隠し玉」、そして20周年特別寄稿としての各作家の「私の隠し玉」プラスエッセイという趣向はいい。しかしそこから各ジャンル別の年間を通じた傾向、名作群の紹介がなく、なんと『このミス』大賞出身者の海堂尊の書き下ろし短編やその年の『このミス』大賞受賞作の抄掲載といった、商業主義丸出しの小説が載っているのが非常に解せない。 こういう者を読みたいためにこのムックを買っているわけではなく、その年一年のミステリの総括を含めた年一回のお祭りを愉しむために買っているのだ。それにどこの馬の骨とも知らぬ作家の(海堂氏は別として)作品発表をされても、興を殺ぐだけである。非常に不愉快に思った。 特に受賞作の抄文掲載は、読んでみてもはっきり云って何の食指も湧かなかった。恐らくこれで刊行時の部数引き上げを狙ったのだろうが、私個人としてはこれを読んだがために買わなくていいやと思ったくらい。逆効果に過ぎないと思った。 なんか勘違いしてきたなぁ、宝島社。 |
No.1 | 4点 | 江守森江 | |
(2010/06/20 04:57登録) 本来なら年刊雑誌なので採点は一律の3点だが、自前の「このミス大賞」作品の抄録と「このミス大賞」作家の看板である海堂尊の短編を掲載し始めた事に1点加点した。 圧倒的に非難されたがランキング自体がネットでの雑談ネタになった現実を察知する嗅覚は宝島社が一番上手で、雑誌を売る術にも長けているのだろう。 海外翻訳ランキングは相変わらず興味なし。 国内ランクでは「このミス大賞」看板作家・海堂尊の他社出版作品(宝島社の作品はランク対象外)「ブラックペアン1988」(←このサイトで私は満点の8点にしている)が4点足りずランクインを逃し残念。 逆に、このサイトで唯一逆満点である1点を献上している古野まほろ「天帝のはしたなき果実」が23点も獲得していてビックリした。 「本ミス」ではないので旧来の路線に本格ミステリを引き戻した「首無しの如き〜」「女王国の城」の二作品がトップではないのが「このミス」らしく良いと思う。 作家・ランク共にバラエティーに富んでいてミステリーの裾野は広がる。 |