一匹や二匹
櫟健介ものの番外編、浅田悦子もの、砂村朝人もの ほか

作家 仁木悦子
出版日1984年01月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 人並由真
(2024/12/30 04:08登録)
(ネタバレなし)
 5つの作品を集成した中短編集。
 評者は角川文庫版で読了したが、元版は1983年7月の立風書房版で、収録内容は角川文庫と同一らしい。

 以下、各編のメモ&寸評。

①「一匹や二匹」……長編『二つの陰画』(評者はまだ未読)と同じ世界観の事件らしい。野良の子猫の里親探しに奔走する児童主人公が巻き込まれた、近所の殺人事件の話。心地よい、ジュブナイル風の大人向けミステリ。

②「坂道の子」……ノンシリーズ編。さる事情から心に大きな傷を負ったヒロインが遭遇した、子供の誘拐事件。個人的には、クロージングの余韻まで含めて、一番良かった。

③「サンタクロースと握手しよう」……浅田(旧姓・仁木)悦子の事件簿。兄の雄太郎は登場せず。クリスマスに幼稚園周辺で起きた殺人事件(被害者は大人)。まっとうな謎解きミステリ。

④「蒼ざめた時間」……ノンシリーズ編。バレンタインデーに、思わぬ逆境に巻き込まれた青年が主人公のサスペンス編。ウールリッチの佳作短編みたいな味わい。

⑤「縞模様のある手紙」……長編『青じろい季節』と同じ世界観の事件。ただし主人公は砂村朝人本人というより、その妻の絹子。ちょっと込み入った構造の犯罪を、妙な角度から長めの短編(または短めの中編)にまとめている。

①のみ自宅の周辺で読み、②~④は、冬コミケとその後の打ち上げ飲み会への往復の電車の中で読了。⑤は途中まで②~④と同じ流れで読んで、最後だけ帰宅してアレコレしてから読み終えた。

 単独連作シリーズものでない仁木短編集を読んだのは、1980年にリアルタイムで『銅の魚』を通読して以来、かもしれん。いや、87年の最終短編集『聖い夜の中で』も読んでいたかな?
 本書(『一匹や二匹』)は、結構、楽しかった。

No.1 5点 kanamori
(2010/06/07 00:03登録)
ミステリ短編集(角川文庫版)。
表題作のほかに、「坂道の子」「サンタクロースと握手しよう」「蒼ざめた時間」「縞模様のある手紙」の5編収録。
「一匹や二匹」は長編の秀作「二つの陰画」の探偵役だった櫟健介夫婦の息子が主人公の作品。子供が主人公だと描写が実に活き活きとしていて読んでいて楽しい。宮部みゆきの子供を主人公にしたミステリに通じる味わいがあります。

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