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ミステリの祭典

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白雪姫(角川文庫版)
神津恭介シリーズ

作家 高木彬光
出版日1986年05月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 6点 人並由真
(2025/10/15 23:00登録)
(ネタバレなし)
 神津恭介ものの、比較的初期の作品を集めた中短編集。

①小指のない魔女(小説倶楽部:昭和29年12月号)
②女の手(キング:昭和24年12月号)
③蛇性の女(富士:昭和25年2月号)
④嘘つき娘(オール読物:昭和28年10月号 初出タイトル「幻影殺人事件」)
⑤加害妄想狂(キング:昭和29年6月増刊号)
⑥眠れる美女(オール読物:昭和31年5月号)
⑦白雪姫(宝石:昭和24年1~2月号)

……の7つの事件簿を収録。
 みんな何らかの形で、女性がキーパーソンとなった事件や物語、というワンテーマで集成。

 巻頭から配置通りに順々に読んだが、2~3ヶ月かけて他の長編の合間に目を通したため、最初の諸作は若干、印象が薄くなっている。
①は往診に出た若手医師が帰宅すると新妻が殺されてるというショッキングな導入部で開幕。ラストの某ヒロインの極端な行動が、別の神津短編作品のクロージングを想起させた(たぶんこう書いても、両作を読み終えてない人にはネタバレにならないと思うが)。
②はおなじみ松下研三の活躍篇。
③は……書いていいのかな。のちに神津もののジュブナイル『黒衣の魔女』にリメイクされた作品の原型。解説でその事実は山前さんも書いてないけれど、読み始めるとすぐに気が付く。これも両作に触れた人にはすぐわかるし、そうでない人にはネタバレにはならないだろう。
④は、深夜の新聞社編集部にかかってきた匿名の情報提供の電話から開幕。話の進め方にトリッキィともいえるクセがあり、読後感の特異さが妙に印象に残る一編。
⑤は、妻殺しの妄執に憑かれたと所轄の警察でも評判の男が登場。良い意味でスタンダードな神津短編らしい味わいで、ラストの決着(真相)は高木作品の別の長編も想起させる一方、ある種の普遍性がある。
⑥は、講演中の神津にいきなり見知らぬ若い人妻が寄ってきて接吻の雨を浴びせる珍事から開幕。名探偵をからかうような諧謔めいた発端が、しゃれた海外作品の味わいに近いが、お話の方もそれなりに弾みがあってよい。これもラストに妙な余韻。
表題作の⑦は、雪の密室、兄弟間の葛藤と、どこか横溝の『本陣殺人事件』を思わせる趣向で、同作の影響またはそちらからの刺激で生まれた作品かもしれない。並列的に並べられた複数の容疑者、そんな連中の背後の事情……とパズラーのフォーマットを尊重した作劇の感触にゾクソクワクワクする。
 トリックは確かにバカネタなのだろうが(たぶんたしかに実際にやってみれば、絶対にそうはうまくいかない)、一方でなんか当時の先端技術? に期待を込めたらしいトリックメーカーとしての作者の欲目も感じて、憎めない作品にはなっている。二転するどんでん返しも一応は評価の対象。

 丸々一冊、ダイレクトに読みやすく面白いか? と言われると、ちょっと言い切れない、逡巡しちゃう部分はあるが、全体としてそれなりに楽しめる連作短編集。神津ものの短編集の味わいを知るには、恰好の一冊かもしれない。

No.1 4点 kanamori
(2010/06/06 23:41登録)
神津恭介シリーズの短編集。
いずれも女性が重要な役割をする7つの短編が収録されていますが、神のごとき名探偵が扱うには小粒な話が多かったです。
表題作の「白雪姫」は雪の密室殺人を扱っていて比較的派手ですが、そのトリックは苦笑もので、現在こんなミステリを書けば袋叩きにされるでしょう。

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