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ミステリの祭典

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悪党パーカー/殺戮の月
悪党パーカー

作家 リチャード・スターク
出版日1979年04月
平均点7.50点
書評数2人

No.2 8点 tider-tiger
(2023/09/16 01:10登録)
『あんたらしくもないぜ、パーカー』by ハンディ・マッケイ

~二年前にアラン・グロフィールドと組んだヤマ。獲物の7万ドルはまだれいの遊園地(悪党パーカー/殺人遊園地参照)に隠したままだ。グロフィールドに声をかけて回収に行ったところ、金は消えていた。もちろん最寄りの警察署に届けられてはいない。街を牛耳るアル・ロジーニがネコババしたのに違いなかった。

1974年アメリカ。悪党パーカーシリーズの16作目。次作『エンジェル』(未読)の出版まで約20年待たされることとなるため、本作はシリーズの最初のピリオドともいえる。頁数といい内容といいシリーズの集大成に相応しく、エンタメとしてもシリーズ最高峰の作品。

7万ドルもの金を二年も遊園地に隠したままにしておくなんて……もっと早く取りに行けよと。それはさておき、本作は初期作『犯罪組織』の拡大再生産の趣あって、構成、敵方の造型、美味しさの秘訣などは通じるものがある。ただ『犯罪組織』はあくまで犯罪小説であったが、本作は冒険小説の色が濃い。

実は本作には少し違和感がある。悪党パーカーシリーズの傑作の一つであることは認めるものの、パーカーに緩みを感じなくもない。
厳格な規律を冷徹に守り抜く信念に揺らぎを感じるのだ。
冒頭に挙げたハンディ・マッケイのセリフのとおり。パーカーはマッケイのこのセリフに対して色々と言い返す。だが、冷徹なパーカーに狼狽の色が読み取れてしまうのは気のせいだろうか。そして、作者にも。
パーカーの緩みは何度か感じたことがある。それらは常にクレアかアラン・グロフィールドが絡んでいるときである。
※『襲撃』の書評で雪さんがグロフィールドに苦言?を呈されていたが、自分もまったく同感。
クレアとアラン・グロフィールドはシリーズに彩りを添えた。だが、同時に緩みももたらしてしまった。世界を豊かにしつつ世界を破壊してしまうどうにも悩ましい存在だと思う。
※クレアはまあどうでもいいが、アラン・グロフィールドは自分も好きなキャラではある。

『悪党パーカー/掠奪作戦』を読了。シリーズのパートⅠ全16作読破(パートⅡは『悪党パーカー/ダーゲット』のみ読了)したので総評を。
駄作なしの非常に優れたシリーズだった。
1~4はいわばパーカーの復讐劇。5~8は犯罪プランナーとしてのパーカーが確立されていく。9~12はいわゆるヤマを中心に据えたゲーム性の高い4作。13~16はいまいち一貫性がないが、変わらず質は高い作品群といった感じだろうか。

1悪党パーカー/人狩り
2悪党パーカー/逃亡の顔
3悪党パーカー/犯罪組織
4悪党パーカー/弔いの像

5悪党パーカー/襲撃
6悪党パーカー/死者の遺産
7汚れた7人
8カジノ島壊滅作戦

9悪党パーカー/裏切りのコイン
10悪党パーカー/標的はイーグル
11悪党パーカー/漆黒のダイヤ
12悪党パーカー/怒りの追跡

13悪党パーカー/死神が見ている
14悪党パーカー/殺人遊園地
15悪党パーカー/掠奪作戦
16悪党パーカー/殺戮の月

水準には達しているが、少し落ちるかなと感じたのは二作目『逃亡の顔』と、この前読んだばかりのラス前『掠奪作戦』の二作か。
好きな作品を個別に挙げるのは難しいが、時期としては5~8の作品群の雰囲気がもっとも好み。
ちなみに客観評価では今回書評した『殺戮の月』はベスト3には確実に入る。

No.1 7点 kanamori
(2010/05/24 22:13登録)
悪党パーカーシリーズの第16弾。
シリーズ第1期の最終作で、質量ともに今までの作品を圧倒しています。これで打ち止めにする予定だったはずで、グロフィールドをはじめ過去の仲間が勢ぞろいし、遂に地元ギャングと決着をつけます。
ある理由によってパーカーが激昂するシーンが読みどころでしょう。シリーズ最高傑作だと思います。

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