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ミステリの祭典

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真夜中の密室 密室殺人傑作選
山前譲編

作家 アンソロジー(国内編集者)
出版日1995年05月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 5点 斎藤警部
(2025/08/25 10:40登録)
山村美紗■呪われた密室
京都の古い宿を舞台に、小味でたおやかな和風密室譚。 形態と同時に機能を変える小道具使いに、人情と実利、それぞれ複数の動機群が集約される様には膝を打つ。 佳きスターター。  6点

高木彬光■影の男
社長が今にも臨終というその時、つい先頃まで普通に話していた、社長の長男である専務が絞殺死体で発見された! この滑り出しは魅力的だ。 ××やらナニ絡みのトリッキーな動機を期待していると、、 数日後、次なる殺人事件発生。
うむ、密室トリックが平板なのはともかく、動機も結局そんなアレか・・ 書き分けの甘い登場人物の整理が面倒で、ちょっと読書がカサついた。  4点

中町信■動く密室
あの長篇の原型ではないけれど、自動車教習所、そして路上検定ルートが舞台の連続殺人。 となるとこの表題はクルマそのものを意味していそうなものだが、もう一押しのニクいヒネリがある(ネタバレに非らず)。 広いスコープと奥行きがある犯行トリック全貌には唸らされる。 文体のクセを逆手に取ったような?違和感伏線にも納得。 動機と合わせ、何とも割り切れない結末に残響が深い。  7点

泡坂妻夫■ナチ式健脳法  
こりゃつまらん! わかりにくい! 乱筆乱文取り柄無し! 俺たちの妻夫さん、しっかりしてください!
脅迫事件らしきものと雪の足跡とが交錯する話です。  2点

大谷羊太郎■北の聖夜殺人事件  
うらぶれた芸能人崩れの告白。 舞台は戦後まもない頃、地方巡業先の宿。 殺されたのは歌手の若い女。 容疑者に同宿の男女多数。 不可解興味と噛み合った密室トリック(?)は本当にささやかなものだが、ツイストかました真相の意外性と、思わぬ事件背景、信頼出来ぬ語り手の戯れと情深さには心が動く。  6点

天城一■むだ騒ぎ
被害者にまつわるちょっと面白い不可解興味に、密室とアリバイ(ご丁寧に時刻表)。 そこに時を遡る人間ドラマまで盛り込んでおきながら、短すぎる原稿にストーリーも登場人物もせわしなく詰め込まれて話が分かりにくいこと読みにくいこと、そんな余裕無い所に余分な言葉遊びが鼻につく。 こりゃダメダメダーメでしょう。 尺に余裕のある中篇か短めの長篇に直したら、相当イイ感じになりそうなのに。 詩情の萌芽すら在るのに。 もったいない!  3点

島田一男■渋柿事件
シマイチ余裕の軽密室。 ユルユルの器械トリックにありきたりの真相。 頭の弱い昭和の下層犯罪には目も当てられないが、なんつっても文章が良い。 いちおう言っておくと昔の××事務所の話ではない。  5点

鮎川哲也■妖塔記
灯火管制下にも開かれる寄席。 巨大ダイヤモンドを持ったインド芸人が拉致され、消えた 。。。。 三十五年後にようやく明かされた真相には深い陥穽があった。 某と某が◯◯かと思ったら◯◯じゃないというワンクッション意外性、残酷さが重い。 流石は鮎川の(まずまずいい時の)短篇。 ユーモアにまみれつつも、贔屓目なしに締まりが違う。 探偵役登場のマナーもニクい。  7点

私の持っている文庫本は、表紙の「島田一男」が不敬にも「島田一雄」と誤植されています。 プレミア付きでマニアに売るべきか、出版社を脅すべきかで迷っています。

No.1 5点 kanamori
(2010/05/20 20:39登録)
密室ミステリ・アンソロジー。編者は山前譲。
後発の密室ミステリ作品集なのでどうしても地味なラインナップにならざるを得ないですね。
泡坂妻夫「ナチ式健脳法」、山村美紗のミス・キャサリンもの「呪われた密室」、高木彬光の近松検事もの「影の男」、天城一「むだ騒ぎ」、鮎川哲也の星影もの「妖塔記」(改稿前版)などは、各作家の短編集で既読。
中町信「動く密室」は著者唯一の短編集「Sの悲劇」収録ですが、入手難なのでレアかもしれません。

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