死を呼ぶペルシュロン |
---|
作家 | ジョン・フランクリン・バーディン |
---|---|
出版日 | 2004年04月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 5点 | nukkam | |
(2022/10/03 18:31登録) (ネタバレなしです) 米国のジョン・フランクリン・バーディン(1916-1981)はサイコ・サスペンスの古典「悪魔に食われろ青尾蠅」(1948年)が当時としてはあまりに前衛的であるとして出版を拒否されて(英国では出版されましたが)長らく不遇だったことで知られています。デビュー作が1946年発表の本書ですが、kanamoriさんやminiさんのご講評で紹介されているように合理的に解決されます。とはいえ殺人現場に登場する馬の謎解きは腰砕けに感じられるし、動機のかなりの部分は後出しの説明と本格派推理小説としてはあまり高くは評価できません。主人公の悪夢のような体験と乱れまくる心理描写が生み出す濃厚なサスペンスが本書の特徴でしょう。人を喰ったような最後の一行もよく考えると怖い運命を暗示しているように思います。 |
No.2 | 7点 | mini | |
(2016/10/24 09:54登録) * 私的読書テーマ”生誕100周年作家を漁る”、また今年2016年が生誕100周年に当たる作家に戻そう、第8弾はジョン・フランクリン・バーディンだ 1940年代に早過ぎた作品を3作だけ残して一時は幻と化していたJ・F・バーディン それを作家兼評論家ジュリアン・シモンズが発掘し、現在では高く評価されている作家バーディンのデビュー作がこの「死を呼ぶペルシュロン」だ 読んで驚いたのは、あの「青尾蠅」のバーディンにしては割とマトモな謎解きミステリーな事だ ええ!何処が?、と普段本格派しか読まないような読者が読んだら異様なプロット展開に面食らうと思うが(笑)、少なくとも「青尾蠅」に比べたら「ペルシュロン」では謎は合理的に解決されるし不条理感は無い、一応きちんと犯人らしい犯人も存在するしね まぁ話の展開が異様というだけなのである 一種の記憶喪失ものと言えなくもないが、”記憶喪失もの”は下手に使うとセンスの無さを露呈するだけになるのだが、この作では謎解きの根幹のような使い方をしていないのでセンスが光る つまり記憶喪失をメインテーマとして扱わず、プロットの異様さを強調する目的のような使われ方をしているのが良い 書き方によっては黄金時代本格派風にも書けそうな内容を、最早戦前とは時代が違いミステリー小説自体が質的変化を起こしているというのを時代に先駆けて具現化したバーディンらしいデビュー作である ただねえ、3作目の「青尾蠅」があまりにも凄過ぎて、やはり採点として「青尾蠅」と同等の点数は付けられないなぁ ちなみに2作目の「殺意のシナリオ」も本は所持しているのだけど、将来的には読むだろうがもったいないから時間が空いた時にでも、いやバーディンを続けて読むのはキツいっすよ(笑) |
No.1 | 6点 | kanamori | |
(2010/11/30 18:57登録) 精神科医が巻き込まれる悪夢のような物語。 ハイビスカスの花を髪に挿した患者の青年、殺された女優のマンションに馬を届けさせる小人たち、記憶を喪失し別人名義で病院で目覚める主人公の精神科医など、序盤のたたみかける展開はスリリングで多くの謎に満ちています。 語り手が精神科医であることや、アイデンティティの喪失を取り入れていることで、後の「青尾蠅」などのサイコ系のサスペンスを想起させますが、デビュー作である本書は全ての謎が合理的に解決されるフーダニットになっています。構成に甘いところがあり中盤だれるものの、一応伏線も張られており、この時代の本格ミステリとしては及第点でしょう。 |