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ミステリの祭典

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密室球場

作家 伴野朗
出版日1982年06月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点
(2019/06/04 21:09登録)
 昭和51年~昭和55年にかけての「小説現代」ほか各誌掲載作を纏めた短編集。昭和54年度の第32回推理作家協会賞候補作となった新聞記者もの「顔写真」から、真夏の甲子園大会決勝戦を舞台にした逆密室風の不可能犯罪「密室球場」まで、全6編収録。題材こそバラエティに富みますが、中には「カチカチ山殺人事件」など不出来な話もあり「短編の名手」という感じはしません。この人は謀略アクションを書いてこそ、と思います。
 収録作ではテト攻勢前の南ベトナムの首都・サイゴンを舞台に取ったソッチ系の「兵士像の涙」が、短いながらも二転三転して読ませます。もう一編の、文革前の毛沢東がどこで劉少奇への決定的反撃を決意したのか?を文献から推測するベッド・ディティクティヴ「毛沢東―― 七月の二十日間」はイマイチ。集中一番リキ入ってるかもしれませんが。
 表題作はグラウンドにいる高校野球チームの実質監督が、五万二千人の観衆と数千万のテレビ視聴者の視線に晒されながら、いかにしてスタンドの女性を殺害したのか?というハウダニット。一応オチは着いていますが、かなり周到な手口なので、これで起訴にまで持っていくのは無理ぽいですね。この後あらいざらい吐いたって事なんでしょうけど。
 読み終えると意外に心に残るのはしみじみ系の「顔写真」かなあ。この好評が、同じ東北を舞台にした後の協会賞受賞作〈新聞記者(ブンヤ)稼業シリーズ〉に繋がっていくような気がします。正直「香港から来た男」のシリーズ探偵がお目当てだったんですが、そっちは〈陳展望探偵譚〉として短編集「殺意の複合」に入ってるようで、本書には未収録だったのがちょっと残念。

No.1 6点 kanamori
(2010/05/23 18:08登録)
初期のミステリ短編集。
中国などを舞台にした謀略冒険ミステリ系の作品が多い著者ですが、この短編集はバラエテイに富んでいます。
緩めの不可能トリックもの「密室球場」、安楽椅子歴史ミステリ「毛沢東-七月の二十日間」、国際謀略ミステリ「兵士像の涙」、地方記者もの「顔写真」、社会派クライムミステリ「やねこい奴」など。私的ベストは、結末に捻りのある「兵士像の涙」。

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