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ミステリの祭典

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朱夏
警視庁強行犯係・樋口顕

作家 今野敏
出版日1998年03月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 6点
(2017/05/31 13:51登録)
樋口警部補シリーズ第2作。
今作の主たる事件は警視庁強行班のものではない。樋口の奥さんの誘拐事件を樋口自身が秘かに捜査するという内容。他の正規な事件と絡めてタイムリミット的にストーリーを進行させる作者の手腕はさすがというほかはない。
ナイーブとも言える樋口には合っているような、合っていないようなテーマではあった。でも、樋口らしさの描写は随所にあった。

本格要素が希薄なところはガマンしよう。この著者には望めない。
安心してスラスラスラ~と読めれば、それだけでいい。

タイトルの語句と意味は最後の最後に出てくる。いちおうテーマらしきものに合っている。こじつけ、後付けかもしれないが、これもうまい。

No.2 7点 ZAto
(2010/10/17 22:13登録)
犯人は前半部分で簡単に想像がつく。その犯人像がシリーズのモチーフである世代間対立を生む。
「犯人は大人になる機会を与えられなかったのだ」のだと。
もちろん多作家にありがちな御都合主義的な部分もある。
容疑者が浮上するきっかけが「夢に出てきた」ではいくらなんでも噴飯ものだし、
犯行に使用したレンタカーが簡単に割れたのも安易だったと思う。
しかし読後感をすこぶる良いものにしたのは、
『朱夏』という不思議なタイトルの由来を樋口の上司の台詞で語らせたことが大きい。
この台詞を読んだ時が、この小説と出会って良かったと思えた瞬間だった。

No.1 6点 kanamori
(2010/05/23 20:32登録)
警視庁強行班の樋口警部補シリーズ第2弾。
今回は樋口の妻の誘拐事件が主題ですが、ミステリとしての落とし所はいたって平凡です。
この地味な警察小説シリーズの読みどころは主人公・樋口の人物造形かもしれません。上司や部下からは信頼されていながら自分に自信が持てない男という設定です。キャラとしては隠蔽捜査の竜崎と比べても等身大で、ときどき出てくる若者に対する説教くさい主張もオジサン読者の共感を呼びそうです。荻窪署の氏家との交情も定番ながら巧い演出だと思います。
警察キャラクター小説として、隠蔽捜査でブレイクする前段階の小説といったところでしょうか。

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