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ミステリの祭典

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紅い蛾は死の予告

作家 梶龍雄
出版日1986年04月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 5点
(2018/06/19 16:45登録)
 うーむ。「清里高原」よりは文章良いですけど、ちょっと狙いを外し気味なような。
まず頻繁に挿入される映画のシナリオ部分。ミスディレクションに加え、ラストシーンと重ねたかったんでしょうけど明らかに滑ってます。提示される事件の内容自体曖昧なので読み辛くなっただけです。演出として生きてないですね。
 そもそもこれは十数年前に起こった事件の謎を探るいわゆる「回想の殺人」形式。必然的に地味にならざるを得ません。
それに加えこの作品の構造上、全編に渡っての矢継ぎ早の展開など起きようがないのです(ホントに最後の最後になって二件の殺人が起きますが)。よっぽど上手くやらないとサスペンスフルな小説にはならないでしょう。
 それなのに沼の屋形と山の屋形の対立、一人娘の弓での心中自殺、一族全員の失踪、それを題材にした映画撮影と、道具立てだけは異様に派手。しかし物語の大半は過去の話を聞き込むだけで、たいした事は起きません。それでも復讐を匂わせて引っ張りますが、結構長めな作品だけに読んでてキツいです。
 勿論最後まで読めば作者のやりたかった事は分かります。お得意の構図の反転劇。構想は良いし、例によって執拗なまでに行間に伏線が張られています。作品を象徴する「紅い蛾」の生態はその最大のものでしょう。
 でもなんかチグハグなんですよね。メイントリックを横溝風に処理してますけど、正直食い合わせが悪いです。このアイデアはケレン抜きでもっと丁寧に仕上げて欲しかったと思います。

No.1 5点 kanamori
(2010/05/12 22:47登録)
過去に一家全員が失踪した村を舞台に、その事件をテーマにした映画の撮影に来た女優が、ある事件に巻き込まれ真相究明に乗り出す話。
映画の脚本と現在の事件が交互に描かれていますが、悪い意味で読み手を混乱させています。読後にストーリーを整理して、作者が何をやりたかったか分かった次第ですが、アイデアは非常に面白いのに(のちの新本格や三津田作品に似たアイデアあり)プレゼンテーションが稚拙なため、スッキリと騙された気にならなかったです。

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