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ミステリの祭典

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鉄鎖殺人事件
藤枝真太郎

作家 浜尾四郎
出版日1954年01月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 nukkam
(2011/09/11 14:54登録)
(ネタバレなしです) 完成作としては浜尾四郎(1896-1935)の最後の作品となった、1933年発表の藤枝真太郎シリーズ第3作の本格派推理小説です。ヴァン・ダインの影響を強く受けたシリーズして有名ですが、ワトソン役の不器用な恋愛を描いている点ではアガサ・クリスティーの「ゴルフ場の殺人」(1923年)を彷彿させます。重厚なプロットの中でこの恋愛描写が単なる添え物以上の役割を果たしているところが優れています。丁寧な心理分析にはヴァン・ダイン風なところもありますが、ヴァン・ダイン作品には見られない要素もあり、今後にますますの飛躍の期待のかかる作家でしたが本書が最後の作品となってしまったのは残念。

No.1 5点
(2011/01/11 21:33登録)
ヴァン・ダインからの影響が大きく、戦前には珍しく厳格な謎解きに徹した作家として知られる浜尾四郎で、本作では『ケンネル殺人事件』がコスモポリタン誌に連載され始めたなんて記述が出てきます。しかし、内容的にはそれほどヴァン・ダインを感じさせるものではなくなっています。事件は東京だけでなく、逗子の方の田舎でも起こり、地域的な広がりがあります。
犯人の見当だけなら、小説構造上かなり早い段階でついてしまうでしょう。ただし犯人の名前以外の謎はそう簡単には解けないでしょうから、問題はありません。真相にはヴァン・ダインの20則的な意味では多少不満がありますし、真犯人指摘のタイミングもいまひとつですが、やはり構造はしっかりできています。昔『殺人鬼』を読んだ時には気づかなかったのですが、名探偵藤枝真太郎の設定にも元検事である作者らしい配慮が伺われます。
ただ、乱歩や横正のような文章の巧みさが感じられませんし、漢字の使い方も、これをひらがなで書く?と思えるようなところもあって、文学的な意味では評価を下げざるを得ません。

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