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ミステリの祭典

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黒いヒマラヤ

作家 陳舜臣
出版日1964年01月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点
(2016/02/29 10:18登録)
ヒマラヤの高峰カンチェンジュンガの架空の麓町・カムドンで、主人公の毛利は友人のカメラマン・長谷川と会う予定だったが、そのとき彼はすでに車の転落事故で死んでいた。
『第三の男』か、と思わせるようなドラマチックな冒頭。それはちょっと大げさだが、それでも、これはと期待を抱かせる出だしである。

インドの活仏が遺した宝石を巡る連続殺人の謎解きが主題となっている。
だから本格派ミステリーにはちがいないのだが、巻き込まれ探偵の毛利も狙われるし、そもそも秘宝が絡んでいるから、冒険サスペンス小説風でもある。
ということで楽しみどころは満載のはずなのだが、ちょっと違う。

まず、宝石の争奪戦ということで、『マルタの鷹』を連想し、決してドタバタ劇ではないのに、そう見えてしまうこと。裏の解説に詩的文体とあるが、物語の内容にあまりにもかけ離れた感があること。
しかも視点が多すぎて、違和感があるなぁ。
という理由で、よかったのはアリバイ崩しぐらいか。それだけあれば十分ではある。異国情緒を楽しめたのもよかったかな。
ラストは、こういう小説なら、これは有りかなという感があり、気にならなかった。

大昔に読んだことがあるが、記憶に残っているのは冒険物語ということだけ。今回再読してみて、中途があまりにも本格風なのにびっくり。でも読み終えるとやはり、冒険風味が勝ちすぎな気がした。

No.1 6点 kanamori
(2014/02/10 18:56登録)
ヒマラヤ学術調査団の一員でカメラマンの長谷川は、死期を迎えたチベットの高僧からある物を委託されるが、車で崖から転落死する。カルカッタから帰国途上で現地に寄った毛利は、旧友の死に疑問を抱き調査を始めるが、彼も何者かに襲われる--------。

インド最北東部、チベットとの国境の町を舞台に、ダライ・ラマの側近の高僧が遺した秘宝を巡る連続殺人を扱った異色の本格ミステリになっています。
この架空の町”カムドン”の情景描写が現実感に溢れていて秀逸。インド人、ネパール、中国系、日本人医師など雑多な人種の吹き溜まりのような辺境の地で、複数の欲望が交錯する人間ドラマは作者の真骨頂です。題材から通俗冒険スリラーのような展開になっていますが、いくつものさりげない伏線が終盤に次々と回収される構成は緻密で、アリバイを巡る重層的な推理過程もよく考えられていると思います。
ただ、真犯人の設定に意外性があるものの、最後は犯罪小説のような結末になっているのがやや不満な点です。

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