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ミステリの祭典

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帰らざる夜

作家 三好徹
出版日1974年01月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 人並由真
(2020/08/31 05:13登録)
(ネタバレなし)
 その年の秋。都内のある会社の営業職の青年・辺見武司は、仕事で関西にいるはずの新妻・早苗の姿を東京駅のホームで見かけた。不審を覚えた辺見は早苗の足跡を確かめるが、その行方は杳としてしれない。やがて彼女の消息を追って名古屋に来た辺見は、関係者の華道家・池上春海を追跡し、その先で予想しなかった殺人事件に遭遇。そしてその事件は、辺見を驚愕の事実へと導いていった。

 1967年9月から翌年1月まで新聞連載されたフーダニットのパズラー。
(なお恐縮ながら、先のkanamoriさんのレビューを読むと、トリックに関するコメントの部分で真犯人が限定されてしまうおそれがあるので、これから本書を楽しむ気のある方は、その旨だけはご注意。)

 講談社文庫版で夜中に読み始め、3時間で読了したリーダビリティの高い一冊だったが、少なくとも読んでいる間は退屈はしない。
 それで同文庫巻末の解説(権田萬治が担当)によると、本作は新聞連載時には「犯人当て懸賞小説」の体裁をとっていたようだが、さすがに毎日山場を設けなければならない? 新聞小説らしく、物語の起伏は豊富。
 また容疑者の頭数もかなりのものだが、一方で怪しい奴を出すために、かなり強引に事件のなかにひっぱりこまれた登場人物もいるように思える(笑)。
(しかし連載当時、物語のどのタイミングで<読者の犯人当ての応募>を区切ったのかが気になる。ここらかな? と思える箇所はあるが、「そこ」まで読むと犯人当てとしてはやさしすぎるし、それ以前だと手がかりがまだまだ少なくて、難しいような……?)

 メイントリックそのものは、いかにも昭和のB級パズラーという感じの創意で、個人的には悪くなかった。犯行時のイメージも、ビジュアル的にちょっと面白いかもと思う。
 ただまあ(kanamoriさんもおっしゃっているが)真犯人の殺人の動機には説得力が弱いと思うし、少なくともこの殺害状況の必然性はかなり薄いのではないか、と疑問。
 お話そのものは随所にムリが目立つ一方で、いろいろと言い訳は用意してあり、その辺の作者の苦労ぶりがなんか楽しくはあるんだけれどね。

 ちなみにくだんの権田萬治の解説では、それこそ強引に本作を、ロスマクめいた男のロマンミステリに持ち上げたいような感じだけれど、(そういう作風の気配がまったくないとは言わないが)実際にはかなり違うのではないか、とも思う。だってねえ、肝心の(中略)。
 まあトータルでは、佳作といえるとは思いますが。

No.1 5点 kanamori
(2010/05/15 15:35登録)
犯人当て懸賞小説として新聞に連載された長編ミステリ。
失踪した新妻の行方を追う主人公という設定は、著者自身の「消えた蜜月」の男女裏返し版でもあり、いくつかの社会派ミステリで既読感のあるプロットですが、プロ野球選手の愛人殺し発生後に、妻をめぐる人間関係が錯綜してきてから本格ミステリの様相を呈します。
地名誤認トリックはともかく電話アリバイトリックはあまり感心できませんし、犯人の動機も納得いくものとは思えませんでした。

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