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ミステリの祭典

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影の凶器

作家 梶山季之
出版日1964年01月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 5点 クリスティ再読
(2025/05/18 15:00登録)
「黒の試走車」は「産業スパイ事始」といった感覚で、自動車メーカーで「産業スパイ課」が立ち上がっていく話、というものだった。本作は同じく産業スパイをテーマにしているが、「黒の試走車」とは逆アプローチ。一匹狼が「産業スパイ」の旗を掲げて、家電メーカーの裏側で非合法でエゲツない手段を駆使して暗躍するピカレスク。
でもアメリカ仕込みの理論派でもあり、クライアントには内緒だが実は初陣。ハッタリもいろいろ効かせながら家電メーカー社長(松下幸之助がモデル?)に取り入って、自分の「産業スパイ」というビジネスを確立する話でもある。

最大の武器は「女」。女を騙して利用して裏切らせて情報を得たり操ったりがこの男の十八番。だからサラリーマン向けエロも完備(苦笑)他愛もない、と言ってしまえばそれまでだが、この愛欲に溺れる愚かさ自体が普遍でもあるから、どうしようもないといえばどうしようもない。「影の凶器」とはまさしく「女」。でも最後で本人が「俺こそ、影の凶器じゃあないか!」とウヌボれるから、転落劇も描いてみたらいいのかもよ。

要するに人殺しをしない伊達邦彦。意外なくらいに騙した女に恨まれないのが人徳(苦笑)

No.1 5点 江守森江
(2010/03/27 09:03登録)
作者の真骨頂とも云うべき産業スパイ物の一冊。
スパイ方法が会社の重要情報を仕切る重役の秘書を誑し込むセックス・スパイで、現在でも対象相手を選べば通用していると思える位にリアル。
タイトルを「影の凶器」としたセックス・スパイだと悟らせない手口は恋愛にも応用可能で、一風変わった実用書でもある。

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