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ミステリの祭典

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黒白の虹
近松検事シリーズ

作家 高木彬光
出版日1963年01月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 7点 人並由真
(2022/05/22 07:16登録)
(ネタバレなし)
 昭和28年。朝鮮戦争の影響が日本に好景気をもたらしていた時代。「東福証券」の若手証券マン・西沢貞彦は、社長の井上文治に呼ばれて、戦時中から残る満州鉄道の今は紙屑同然の株券を、なんとか高騰させるよう拝命する。友人・桂田京介の従姉妹で美人の豊川美佐子のふとした一言から、そのヒントを得た貞彦は作戦を実行に移し、見事に狙いを的中させた。だがそれは、多くの人生を狂わす遠因ともなり、自殺者の悲劇が続出。やがて時代は数年後へと流れて。

 カッパ・ノベルスの31版(1979年1月刊行)で読了。
 近松検事シリーズの第一弾で、評判のいい『黒白の囮』を読む前にまずこちらからと 、この元版の古書をネットで安く購入した。
 
 あまり詳しく書かないが、作品本文は三つのパートで構成。第一部の朝鮮戦争時代に主人公の証券マンたちが法律の枠スレスレで証券価格を上昇させる操作を行い、その結果の災禍が広がっていく。さらにその第一部を端緒に物語は、メインパートといえる歳月を経た第二部に突入。そこではカラーテレビ普及前夜の低価格商品開発競争を主題にした業界・経済もの的な駆け引きのドラマが語られる。

 第一部は、先日読んだばっかりの山田正紀の『弥勒戦争』を想起させて趣深かったが、こっちの第二部の方ではまるで梶山季之の世界のようで、これはこれで非常に面白かった。
 でもって肝心のミステリ要素に関しては、こういう大枠の中でフーダニットパズラーやトリッキィな仕掛けをいくつも導入しようという意欲は買うし、それまでに積み重ねられた伏線がはじける第三部の緊張感は確かにオモシロイ……んだけれど、偶然の多用、作中での同じネタの重複、そして仕掛けの一部が透けてみえる……などなど、やや雑な感じがしないでもない。

 ただし前述したような、まるで別のジャンルの読み物を読んでいるような雰囲気からじわじわとミステリへと転調して、しかも終盤にコンデンスにネタが仕込まれているあたりは、どこか新本格ミステリっぽい。
 そういう意味では内容そのものは120%昭和の時代を舞台にしたストーリーながら、なんとなく平成以降の新本格系の味わいも感じる作品ではあった。
 繰り返すが大味な印象もあるんだけれど、それでも独特のパワーは感じさせる力作だとは思う。
 作者のオールタイム作品を並べていけば、意外に悪くない順位に位置するかもね。

 とはいえ、名探偵キャラクターとしての近松の魅力は、正直まだそんなに見えない。その辺はシリーズ2冊目以降に期待しましょう。

No.1 3点 kanamori
(2010/03/20 12:52登録)
グズ茂こと近松検事シリーズの長編第1作。
以前読んだ「黒白の囮」が非常に面白かったし、タイトルも似てるので期待して読みましたが、楽しめなかったです。
出来が良くないということもありますが、株価操作などを扱った経済ミステリの様相で、殺人事件はあるけども本格ミステリ的要素が希薄でした。
出来不出来の波が大きい作家だと、あらためて思いました。

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