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ミステリの祭典

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うさぎ幻化行

作家 北森鴻
出版日2010年02月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 4点 E-BANKER
(2014/07/20 22:10登録)
2010年1月、48歳の若さで急逝した作者。
作者がちょうどその時期に「ミステリーズ」誌上で連載していた作品が本作。
「音」に着目した珍しい連作形式のミステリー。

~飛行機事故で突然この世を去ってしまった義兄・最上圭一。優秀な音響技術者だった彼は、遺書とは別に「うさぎ」宛に不思議な音のメッセージを遺していた。圭一から「うさぎ」と呼ばれていたリツ子は、早速メッセージを聞くことに。環境庁が選定した日本の音風景百選を録音したと思われるが、どこか不自然なひっかかりを覚える。謎を抱えながら録音されたと思しき音源を訪ね歩くうちに、リツ子は奇妙な矛盾に気付く・・・~

①「ヨコハマ12.31」=謎の提示が行われる一編。桜木町と東横線かぁ・・・
②「対の琴声」=音源を探す旅で訪れた岐阜県美濃市。そこである殺人事件と遭遇することに・・・
③「祭りの準備」=今回の音は祭囃子。
④「貴婦人便り」=JR山口線を走るSL「貴婦人号」。そう、本編の舞台は山口市だ。
⑤「同行二人」=タイトルからも分かるとおり、本編の舞台は「四国八十八箇所参り」。ということで、空海上人がキーワードとなる。本編から徐々に「うさぎ」の謎が深まっていく・・・
⑥「夜行にて」=本編よりキーマンのひとり岩崎が登場。舞台は寝台特急「北斗星」。そこで岩崎は「うさぎ」と出会うが・・・
⑦「風の来た道-夜行にてⅡ」=⑥と対になる一編。舞台は寝台特急「トワイライトエクスプレス」。岩崎は何と別の「うさぎ」と出会ってしまう・・・謎が謎呼ぶ?
⑧「雪迷宮」=舞台はいよいよ北海道へ。札幌の象徴「時計台」の音が問題となるのだが・・・
⑨「うさぎ二人羽織」=本作全体の仕掛けがやっと分かる・・・が、どこか腑に落ちない。

以上9編の連作。
はっきりいってこれはミステリーというよりもファンタジーだ。
もちろんミステリーっぽいエッセンスはあるのだけど、謎が論理的に解明されるというミステリーの大前提からはズレている。

まぁ好みの問題ではあるのだけど、正直なところ個人的には退屈な作品にしか思えなかった。
「音」というテーマはやり方次第では面白いとは思うのだけど・・・

No.1 6点 kanamori
(2010/03/17 20:15登録)
うーん、惜しいです。
途中までは義兄の残した「音のメッセージ」が有機的に各挿話に絡んで、物語に引き込まれましたが、中盤に鉄道雑誌の記者が登場してから、緊密度が低下しご都合主義も目立つようになりました。これは二人の「うさぎ」の橋渡しのために便宜上登場させたという感じです。
また、冒頭の飛行機事故の記事に一文だけ浮いた記載があり、伏線がバレバレになっているのも痛いですね。結末がなんとなく読めてしまいました。

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