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ミステリの祭典

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疑惑の夜

作家 飛鳥高
出版日1958年01月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 人並由真
(2016/07/31 15:13登録)
(ネタバレなし)
 『細い赤い糸』以上に和製ウールリッチっぽい感触で、雰囲気といいリズミカルなサスペンス描写といいとても良い。クライムサスペンススリラーの中に不可能犯罪の興味を組み合わせた構成もなかなかツボを突いている。
 ただし難点は、文書が生硬すぎることで、特に序盤の部分、具体的には、2つ続くセンテンスの中に同じ言葉を多用する例などが頻繁すぎる。商業作品としては、編集者の指導も含めてもっと推敲したものを上梓すべきだ。作者が専業作家ではない、短編デビューののち、ひととき創作から離れていた期間もあった、などの事情は斟酌するにしても。
 とはいえ話が中盤に来て、もうひとりの主人公のヒロインが登場してからは、そんなに文章の固さは気にならなくなる。最後のどんでん返しも鮮烈で、これは読んでおいて損はないね。
 なお、いかにも同時代に白黒映画とか作られそうな内容だなぁと思いながら楽しんでいたら、本当に東映で、高倉健、佐久間良子の主演で映画化されていたらしい。そのうちCS経由とかで観てみたいものである。

No.1 6点 kanamori
(2012/09/24 22:07登録)
戦後すぐに短編でデビューした作者が10年後に初めて書いた長編ミステリ。仁木悦子「猫は知っていた」が受賞した第3回江戸川乱歩賞の最終候補作を改題したものらしい。

あらすじは、主人公の男女が謎の脅迫者を追及・対峙するというスリラーなんですが、ある理由で主人公が工作したアリバイの証人たちが皆”そんな憶えがない”と否定される「幻の女」パターンの不可解な謎が魅力的で最後まで引っ張ります。密室状況下の殺人や人間消失、最後に明かされる〇〇トリックと、本格ミステリの要素を複数詰め込んでおり、古臭い文章に我慢できればそれなりに楽しめます。

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