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ミステリの祭典

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厨子家の悪霊
山田風太郎 奇想コレクション

作家 山田風太郎
出版日1997年06月
平均点8.00点
書評数2人

No.2 9点 斎藤警部
(2022/07/10 10:00登録)
絶版復刻’97 by ハルキ文庫。

「厨子家の悪霊」  これぞ風太郎の、立方体型の名刺。医学にズブッと根差した、分厚い伏線と分厚い大反転の超絶技巧剛速球は、最後に浮かび上がる分厚い人間ドラマと不可分。ホンマ、強烈やで。。。。最後の台詞だけ、ちょっとショートショート風なのも悩ましい(?)。 
「殺人喜劇MW」  解説無用の面白話。ちょっと割り切れ過ぎなのは、割り切って書いたんでしょう。
「旅の獅子舞」  色彩豊かに述懐される、田舎芸人社会で発生した犯罪の顛末。美文と諧謔の一筆悲劇。沁みます。最後の晦渋な台詞こそが主文か。
「天誅」  普通だったらショートショートとされる長さの本作の、あまりに文学的に粉飾された美しきクソ大バカトリックに憤死のふりでもしてみるかァハハ!!
「眼中の悪魔」  これぞ医学ミステリの精髄。強烈な表題に深淵な覚悟が宿る。或る日記を繙きつつ回想する、恋愛を道連れにした狡猾無比な犯罪の経緯と、その因果律。 ”ああ、呪わしい論理の遊戯!”
「虚像淫楽」  二つのミスディレクションにまんまと絆される。或る事象のターゲット、まるで気付かなかった。ところが、それどころじゃなかった!謎なる穴の中を覗いてみれば、思いのほか広大な空洞が黒々と広がっていた。これは激し過ぎる、熱過ぎるお話。終盤一瞬のユーモアにグッと来る。医学ミステリの枠を大胆に踏み外したものだ。怖ろしく微妙に処理された、あの考えオチ要素の今後が本気で気になる。
「死者の呼び声」  ドライ風太郎とウェット風太郎の豪腕ハイブリッド。マトリョーシカ内の階級闘争?いやいや、心も頭も揺さぶられました。  

読んでいて胸が苦しくなるページの割合が高い、薬効強すぎのアンソロジー。 この並びって事は、最後の作にコミック・リリーフも少し兼ねさせているのかな。

No.1 7点
(2010/02/15 12:36登録)
このサイトに登録済みの本格篇「眼中の悪魔」(光文社)と一部作品がだぶっているのですが、他の作品が併録してあるし、タイトルが『厨子家の悪霊』となっているので本書も新たに登録しました。

巻末の有栖川氏の解説によれば、山風作品の特徴を「奇想」、つまり奇想天外なプロット、奇抜なトリック、不思議なロジック、意外な(恐ろしい、ゆがんだ、幻想的な、爆笑の)結末、と表現していましたが、まさに言いえて妙です。

(以下、ネタバレになるかも)
表題作には連なるどんでん返しに息を呑み、ラストのセリフには落語のオチのようで笑えてしまいました。『殺人喜劇MW』は、O・ヘンリーの『賢者の贈り物』的なラストの発想に仰天し(くわえて笑え)、『眼中の悪魔』にはフーダニットよりも展開の良さに引き込まれました。その他4編、すべて奇想な本格短編です。それに、くそまじめで固すぎる文体は、初めは作風に合っているのか合っていないのかわからなかったのですが(実はちょっと読みにくさがありました)、読み進むうちに物語とのアンマッチ感に笑えてしまい、結果的には文体にも満足しました。

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