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ミステリの祭典

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霧の港のメグレ
メグレ警視 別題「霧の港」

作家 ジョルジュ・シムノン
出版日1954年12月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 クリスティ再読
(2022/04/03 10:18登録)
瀬名氏は本作がお気に入りのようだけども、そこまでいいか?という感想。シムノンらしい北の港町の事件で、「海の男たち」と町の旦那衆との相克めいた関係が背後にある。もちろん、メグレは「海の男たち」贔屓。
でも海の男たちもメグレに対して結束して全部だんまり。記憶喪失でパリで発見された元船長をメグレがその地元に送り届けたら、その晩に毒殺された...というのが本書の「事件」だけど、メグレがメインで解明するのはやはりその船長の記憶喪失を巡る暗闘の話で、筋立てがごちゃごちゃした印象。

でもね、メグレが問題の船に乗り込んで事情を聴いている嵐の夜に、油断したメグレを縛り上げてウィンチで岸壁に置き去り(でも船は座礁)....なんて「メグレ、お疲れ」なシーンがあったり、リュカが一晩中背伸びをして村長の家の中を覗き込んで監視するお疲れ場面、あるいは「砂丘のノートルダム」と呼ばれる廃墟の礼拝堂やら、船長の女中で本作のヒロイン格のジュリーとその兄の船員グラン=ルイとのメグレの場面(第九章)やら、なかなかいいシーンがある作品でもある。

No.1 6点
(2010/01/30 21:01登録)
初期メグレものの中では長めの作品で、章立てもいつもより少し多めの13章になっています。
タイトルどおりというか、より正確には夜霧、それも濃霧に包まれた港が舞台です。港のあるのは北フランスで時期は10月末。
その霧の中、メグレは自ら一晩中張り込みを続けたり、手足を縛られて波止場に放置されてしまったりと、今回の事件ではかなり散々な目にあいます。おまけにパリから助っ人に呼び寄せたリュカ刑事まで出し抜かれて。
事件に何らかの関係がありそうな人物たちは半ばあたりまでで出揃います(一人正体不明の人物がいますが)。パズラーではないので、単なるレッド・へリング人物はいません。ところがみんな嘘をついたり黙秘したり、リュカが途中で弱気になるほどです。舞台や事件の裏の扱いなど、全体的に『黄色い犬』との共通点を感じさせる作品でもあります。

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