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ミステリの祭典

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Fの悲劇

作家 岸田るり子
出版日2010年01月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 5点 E-BANKER
(2019/10/23 21:56登録)
京都を舞台にしたノンシリーズ長編。
久々に作者の作品を手に取ったが・・・
2010年の発表。

~絵を描くことが好きな少女さくらは、ある日、月光に照らされて池に浮かぶ美しい女性の姿を描く。その胸にはナイフが突き刺さっていた。大人になった彼女は、祖母に聞かされた話に愕然とする。絵を描いた二十年前、女優だった叔母のゆう子が、京都の広沢の池で刺殺されたというのだ。あの絵は空想ではなく、実際に起きた事件だったのか? さくらは叔母の死の謎を探ろうとするが・・・~

物語は過去(1988年)と現在(2008年)を交互に描くことで進んでいく。
主人公さくらは、二十年前の密室殺人事件の謎を探ろうとし、読者は二十年前の事件の顛末を同時に追うことになる。
こういうプロットでは、概ね過去から現在のどこかに齟齬や歪みがあって、それが現在まで謎として残っている・・・というパターンだ。
では、本作の場合、どこに齟齬や歪みがあるのだろうか?

そういう目線で読み進めたわけだが、うーん・・・期待したような鮮やかなものではなかった。
①ゆう子の子供の正体や②密室殺人、③後追い自殺の真相のどれもが腰砕けという印象。
①は最初から自明だろう。途中で目眩しのような引っ掛けはあるものの、「あーやっぱり」という感想になる。
②は他の方も書かれてますが、「そんなこと!」っていうトリック。っていうか、トリックというほどでもない。
③は・・・「気をつけろよ!」って言いたくなるような真相。

という感じで、パズラー的本格ミステリーを期待すると失望を味わうことになる。
かといってサスペンスやファンタジック感が強いわけでもない。
要は中途半端ということかな。或いは狙いすぎ。
いかにも作者らしい雰囲気は醸し出しているだけに、勿体無いという思いは残った。
ところで、「F」はなんの「F」なんだろ?
female?
(全く関係ないけど、京都はミステリーの似合う街だね・・・)

No.1 5点 kanamori
(2010/03/24 22:27登録)
20年前の叔母の謎の死を追う女性を主人公とした本格ミステリ。
新しい装飾はされてますが、これは古いタイプのミステリでした。
主な謎は2つ、殺害現場の京都郊外のペンション型アパートが密室で当時入居者全員にアリバイがあったことと、叔母の出産したばかりの赤ん坊が消えたこと。密室トリック(同時にアリバイトリックでもある)はヴァン・ダイン時代のもので、赤ん坊の処理も使いふるされた陳腐なもの、容易に推察できました。

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