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ミステリの祭典

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鳥―デュ・モーリア傑作集

作家 ダフネ・デュ・モーリア
出版日2000年11月
平均点7.67点
書評数3人

No.3 8点 蟷螂の斧
(2021/04/16 17:28登録)
①恋人 8点 切ない恋物語。彼女は墓場で眠るという。ホラー系?・・・反転がお見事
②鳥 9点 登場人物、筋は映画とは違います。カモメの大群が海に浮かぶ描写は印象的。鳥が目を襲撃してくる恐怖。ラスト煙草を忘れた主人公の嘆き。うまいね
③写真家 6点 侯爵夫人と写真家の青年との束の間のロマンス。他の書評では情事と書かれている方が多いがプラトニックの方が適切な表現?(笑)
④モンテ・ヴェリタ 8点 若妻が山の修道院に姿を隠す。夫とその友人、二人とも彼女を愛していた・・・幻想的な短篇です。「ここには救世主も神もない。光と命を与えてくれる太陽があるだけ」が印象的
⑤林檎の木 8点 庭のリンゴの木が、亡くなった妻の姿に似ている。ホラー系
⑥番(つがい) 5点 題名は旧題「オールド・マン」「爺さん」の方がベター。訳者は本作の趣旨が分かっていなかったんだろう(苦笑)
⑦裂けた時間 8点 夫人が自宅に帰ると他人がいる。陰謀?記憶喪失?そういう手があったのか
⑧動機 8点 夫人が拳銃自殺。探偵が動機を探るが・・・彼女の心中までは?
バラエティに富んだ作品集でした。

No.2 6点 メルカトル
(2017/02/13 21:46登録)
何と言いますか、大変評価が難しい作品ですね。バラエティに富んだ短編集ですが、それぞれ違った味わいがあって面白いし、翻訳物なのに読ませるんですよ。ただ、新本格などの作風に慣れた私はやや物足りなさを覚えます。単純なストーリーなもの然り、気の利いた捻りがなく拍子抜けするもの然り。『鳥』はヒッチコックの映画で有名ですが、映画よりずいぶんあっさりしていますし。鳥の執拗な攻撃はよく描かれているとしてもですね。
おそらく本作品集はそういった観点から評価するべきではなく、例えば行間を読むとか、それぞれの作品世界に浸ればよろしいとか、そういったタイプの珍しい短編集なのではないかと思います。
誰もが認める白眉であろう『モンテ・ヴェリタ』などは、その一風変わった物語に引きずり込まれ、まるで自分が主人公になったような錯覚さえ覚えます。その臨場感溢れる描写力は凄まじく、そうそうお目にかかれない珍品と言えそうです。


【ネタバレ】


まさかこのような年代物の作品に、叙述トリックが仕掛けられたものが紛れ込んでいようとは夢にも思いませんでした。

No.1 9点 mini
(2009/11/06 09:51登録)
異色短篇作家と言うよりも単純に長編「レベッカ」で有名な、と言った方が適切であろうデュ・モーリア
しかし巷では短篇の評価も高く、お為しに短篇集から読んでみた
表題作「鳥」は作者のもう一つの有名作だが、実は原本では「鳥」が表題作ではないのだ
やはりヒチコックの映画で有名なこちらを表題作にした方が売れるだろうという創元の思惑に違いない

特に得意なのが古風な舞台設定で、昔からの定番のテーマを現代を舞台に置き換えたお話はよくあるがデュ・モーリアは逆
古き革袋に新しい酒を盛るという言葉があるが、古風な舞台設定の中で聞いたことも無いような物語が展開される感じと言えば近いか
内容はかなりヴァラエティに富んでいて、「鳥」がパニック小説ならば、本来の表題作「林檎の木」なんてほとんど心理ホラーな怪談話だし、「番(つがい)」は何と○○トリック、集中最も謎解き色の強い「動機」は私立探偵小説の趣だ
中でも集中のベスト作「モンテ・ヴェリタ」は荘厳な神々しささえ感じさせる名作だ
唯一の弱点は、決して欠点ではないのだが、短篇とは言っても分量的に長めの短篇が多く、短い長さでラストのオチの切れ味勝負な短篇ばかり好む読者には向いていない点だ
オチだけが異色短篇の絶対評価基準じゃない、短篇作家としてのデュ・モーリアも恐るべき作家だった

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