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ミステリの祭典

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破局
異色作家短編集

作家 ダフネ・デュ・モーリア
出版日1964年08月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 6点 蟷螂の斧
(2021/04/14 17:12登録)
短篇らしいオチがないのが特徴と言えばばいいのか?捉えどころのない曖昧さで、後でじわっとくる感じとでもいうのだろうか?不思議な雰囲気(奇妙な味とも違う)の作品集でした。
①アリバイ 6点 男はある親子(母・息子)を殺害しようと、その家の地下室を借りるが・・・男も母親も精神のバランスが崩れており、非常に不安定な気持ちになる。題名のアリバイは不在証明ではなく、語源の「他の所」という意味のようです
②青いレンズ 6点 眼の手術で仮の青レンズを入れると見えるものが違っていた。それはありのままの姿といういうが・・・
③美少年 7点 美少年に魅せられた男は美少年の親せきに騙されるのだが・・・人間の性は治らない?
④皇女 6点 不老の水が湧くというある国の盛衰を寓話風に描いた作品。いい加減な情報に操られてしまう人の心は現代も同じ
⑤荒れ野 5点 口のきけない幼子が大自然の中で・・・童話風でいい話なんですがミステリの採点なので
⑥あおがい 6点 30代後半の女性の独白。両親、夫、愛人について。どうして私は不幸なんだろう。題名は貝。原題は「カサガイ」で巻貝。しがみつくという意味もあるようだ

No.1 8点 mini
(2017/02/01 10:13登録)
大分遅ればせになってしまったが、先月12日に創元文庫からダフネ・デュ・モーリアの短編集『人形 (デュ・モーリア傑作集) 』が刊行された
創元文庫ではその前から『鳥』と『いま見てはいけない』という2冊の短編集が刊行済であり、今回が第3弾となる
日本では長編「レベッカ」のみで知られる感のあるデュ・モーリアであるが、例えば創元文庫からはもう1つの代表作「レイチェル」も刊行されており、決して「レベッカ」だけで語られるような作家ではないのである
さらにデュ・モーリアで忘れてはいけないのが短編作家としての側面で、切れ味勝負な作風じゃないからかこの方面で言及され難いが、そのクォリティの高さは本領は短編作家なのではないか?という意見が出てもおかしくはない
日本での出版社事情も加味すると、「レベッカ」が新潮文庫なので、あまり早川や創元のイメージを持つ読者は多くないかも知れない
しかしね、新潮文庫から出てるのはは「レベッカ」くらいなのですよ
むしろ巻数だったら長編だけでなく今回で短編集が全3巻になった創元文庫の貢献は重要である、そして早川では異色作家短編集全集の1巻にデュ・モーリアを入れている
私は以前にこの早川の全集の顔触れを眺めた時に、他のラインナップメンバーの名前と比べてデュ・モーリアの名が有る事に違和感を覚えていたが、でもそれは私の恥ずかしい偏見だったのである
実はデュ・モーリアという作家は作風のイメージからか古風に思われがちだが意外とモダンな作家で、他の異色短編作家達、コリアやダールやエリン等と比較しても活躍年代はそれ程大きくズレてはいない
出世作「レベッカ」が戦前(それも戦争のちょっと前)だったので古い作家みたいに思われてるだけで、そもそも「レベッカ」自体が初期作だし、活躍時期的にはデュ・モーリアは戦後作家だと言ってもいい

作者の短編集は以前に創元文庫版『鳥』を読んだが、その神々しいまでの格調と質の高さに驚いてしまった
今回読んだ早川の異色作家短編全集版は残念ながらそこまでの格調の高さを感じなかった
どちらかと言えばミステリー色が強く、この作者だから下世話ではないにしても、現実的な世界を舞台にした話が多い
つまりSFファンタジー的な『鳥』に対し、早川版のはミステリーっぽいのだ
ただしミステリー色が強いから質が高くなるわけじゃない(笑)
はっきり言わせてもらえば、質の高さに関しては創元文庫版『鳥』の方が上である
この早川の全集版は必ずしも作者の最良の部分が出ているか?というと若干疑問もある
ただし入門向けにはこちらの方が入りやすいかも知れない

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