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ミステリの祭典

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吉原手引草

作家 松井今朝子
出版日2007年03月
平均点8.00点
書評数2人

No.2 9点 itokin
(2010/02/22 19:57登録)
もともと時代物は好きなんですが、これはその中でも大好きな1冊になりました。派手な立ち回りなどはないが、遊郭吉原の中が丁寧に詳しく興味深く書かれており其れでいて格調が高いですね。特に終盤の謎解きはスカッとしました。

No.1 7点
(2009/09/17 09:51登録)
聞き込みにより花魁葛城の失踪の謎を追う、吉原の遊郭を舞台とした新しいスタイルの時代ミステリで、各氏絶賛の直木賞受賞作品です。
聞き込み役である男は人物像が明らかにされておらず、その会話文すらなく、その男の質問内容は、16人の関係者ごとに章立てされた各章の一人語りの会話文(独白風の会話文)の中で復誦される程度でしかわかりません。この一人語りの会話文は語り口調を職種により変えて興趣豊な文章となっており、著者の工夫が感じられます。主人公である葛城は関係者たちの一人語りの中でしか登場しませんが、それによって人柄がおぼろげながら見えてきます。一人語りの中に仕掛けが隠されていて、何人かの語りを読み進めば謎が見えてくるはずなのですが、私の場合、中盤でも謎の影すら見い出せませんでした。すらすらと読めてしまうので、描かれた人間模様の中に隠された伏線も見逃してしまいます。でも、結果的にはそれでも十分に楽しむことができます。推理に必死になるよりもむしろ、吉原という江戸の中でも特殊な空間での花魁を取り巻く様々な人たちの人間模様を楽しみながら読んだほうがいいようです。いちど読んだ後に、解説、再読による復習も楽しめると思います。
実は読書の中盤ごろ、直木賞のサイトを覗き見ていたら、ネタバレに触れてしまいました。大失敗です。それでもショックから立ち直りがんばって読破し、まずまずの満足感を得ましたが、やはりミステリとしての楽しみは半減しましたね。ネタバレショックは無視して採点したつもりですが、無意識に減点してしまっているかも。。。

(以下ネタバレ要注意!)
要注意というほどでもありませんが。。。
ラストに明かされる真相は誰もが好む内容です。冷静に考えれば誰でも想像できることです。多くの楽しみ方があるのは確かですが、ミステリとしては、その種明かしに驚かされるのが楽しいでしょう(ぼくはミスしましたが)。ぼくとしては、この種の真相が好きなので、真相開示のあとに、葛城視点の経過を動機編として加えてほしかったな、とも思います。

(2010年4月追記)
読書中にネタバレ情報に触れたため評点を控えめにしていたが、冷静に考え直せばもう少し評価は高い。よってプラス1点。

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