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ミステリの祭典

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輝く断片
奇想コレクション

作家 シオドア・スタージョン
出版日2005年06月
平均点4.50点
書評数2人

No.2 3点 メルカトル
(2023/02/01 22:40登録)
雨降る夜に瀕死の女をひろった男。友達もいない孤独な男は決意する――切ない感動に満ちた名作8篇を収録した、異色ミステリ傑作選。第36回星雲賞海外短編部門受賞「ニュースの時間です」収録。
Amazon内容紹介より。

久しぶりにハズレを引かされました。『取り替え子』は発想が子供だし『ミドリザルとの情事』は訳が分からないし『旅する巌』は印象に残らない。その後読み進めるも、どれもこれも締まりのない箸にも棒にも掛からないものばかりで、いい加減投げ出そうかと思いました。それでも何とか読了しましたが、少し好みのシチュエーションだったのは表題作のみ。それも何の捻りもないまま終わってしまい、いささか不満が残りました。

本当なら1点にしようかと思いましたが、考え直し3点にしました。それ以上はどう考えても付けられませんね。世評は高いし、文春ミステリーベスト10では3位だし、全く世の中どうなってるんですかね。もしかして私だけですか、この作品の良さが分っていないのは。何とも情けないですわ。しばらく翻訳物はいいやと思わされましたが・・・。また読むけど。
読者を怒らせるのは作者の罪だが、退屈させるのは最もたちの悪い最大の罪だと私は思います。

No.1 6点 tider-tiger
(2015/03/05 20:36登録)
この短編集は広義のミステリと考えられる作品を中心に集められています。
いや、広義の犯罪小説と言った方が適切かもしれません。
以下、寸評を。
 
『取り替え子』
『ミドリザルとの情事』
『旅する巌』
上記三作品は犯罪小説の要素がまったくないので寸評割愛。

『君微笑めば』
今となってはこのテーマは手垢にまみれているし、オチも読めます。ただ、これが五十年前に書かれたのはちょっと驚きかも。語り手が物凄くうざい人物であります。
『ニュースの時間です』
~ここにはひきこもりの男がいるが、彼のひきこもりは、精神医学史上、かつて記録されたことのないものだ。~以上 作中より引用
いかにもスタージョンらしい話だなと思いきや、アイデアが枯渇したと半べそをかいていたスタージョンのためにSF作家ハインラインがプロットも設定も考えてくれてこの作品ができたんだそうです。スタージョンらしさ全開であり、まったくハインラインらしくはない作品なのに。
ハインラインはスタージョンを熟知している……いや、これは愛でしょう。
『マエストロを殺せ』
客観的に評価するならベストはこれです。
倒叙ものと見せかけて、実はそうではない。殺人を成し遂げた後、自分の仕事が不充分だったと気付いて愕然とする犯人。自分はなにを殺すべきなのかと苦悩します。
海外の異色ミステリでアンソロジーを編むとしたら是非とも入れて欲しい逸品。奇妙な味のミステリとして堂々とお薦めできます。
※異色作家短編集『一角獣、多角獣』に収録された小笠原豊樹訳 邦題は死ね、名演奏家死ね の訳文の方が自分は好きです。 ただし、マエストロを名演奏家と訳してはいかんのではと思う。
『ルウェリンの犯罪』
とんでもなく世間知らずな主人公ルウェリン。同僚が「スケを引っ掛ける話」なんかをしているのを聞いて、自分もなにか悪いことをしてみたいと密かに願います。挙句、自分の金を盗もうとして逮捕されそうになったりします。まったくリアリティのない人物像。せいぜいがコメディ、通常なら糞小説となるはずなのにスタージョンの手に掛かるとなぜだかスリリングであり、悲壮感すら漂う。非常に変な読み味の小説ですが、なぜだかこの短編集の中で私が一番好きなのはこれだったりします。
『輝く断片』
雨の夜、瀕死の女を拾った孤独な男。彼は決意する。「おれやる、全部やる……」
個人的にはあまり好きな作品ではありませんが、偏愛する人も多いようです。訳者の伊藤典夫さんも「随分昔に一度、適当に訳したのだが、いつかきちんと訳し直したい」とずっと思っていたそうで。

一般にはSF作家と認識されているシオドア・スタージョンですが、実際はジャンル分けが難しい奇妙な小説を書く作家です。武器は語り口、平凡なモチーフを非凡に料理する手際、感情の描写、細部(どうでもいいこと)に凝るところ、そして、作中人物への愛、でしょうか。

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