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ミステリの祭典

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龍の契り

作家 服部真澄
出版日1995年07月
平均点5.67点
書評数3人

No.3 4点 ROM大臣
(2021/06/08 16:39登録)
二百ページぐらいまでは物語が全くといっていいほど進まずイライラ。状況設定のための情報をひたすら詰め込んで、しかも登場人物の八割がたは物語の行方に影響がないというひどさ。本を厚くするために登場人物を増やし、どうでもいい心理描写を加えているようにしか思えない。
はじめにドタバタありきというか、秘密をめぐって右往左往というところまでは成算があったのだろうが、どのように収束させるかのモチーフがなかった。

No.2 6点 TON2
(2012/12/01 14:10登録)
祥伝社
 1997年のイギリスから中国への香港返還にからんだイギリス、アメリカ、中国、日本などのあつれき。なぜ香港はあっさりと返還が決まったのでしょうか。眠れる大国・中国の経済的可能性を、グローバルな視点から、各国の諜報機関や大使館員などから描いているところは、高村薫を思わせる筆力です。ただ話が生臭すぎるように思えました。主人公である日本人外務省職員の省内でのライバルは、やんごとない方との婚約が決まり寿退職するなんていうのは、あの人のことじゃん。
 たしかにいろいろな国の立場の違う人間が入り乱れて動く様子がきちんと描かれていますが、もう少し地味な感じでもよかったのにと思いました。その点重厚さに欠けます。

No.1 7点 Tetchy
(2009/08/19 23:14登録)
香港を軸にアジアに関与するあらゆる人物、組織が1997年の中国への変換に向けて脈動する。
本書の主人公である外交官沢木喬を皮切りにハリウッドオスカー女優アディール・カシマ、『ワシントン・ポスト』の敏腕雑誌編集員メイミ・タンに彼女の秘蔵っ子であるフリージャーナリストのダナ・サマートン。上海香港銀行の総帥包輝南(パオ・フェイナム)、同頭取エドワード・フレイザー、表向きは通信会社である中国側の諜報機関新華社、日本の某一流電気メーカーをモデルにしたハイパーソニック社長西条亮に10年前の火災事故から奇跡的に生還したコードネーム<チャーリー>と呼ばれるCIA諜報員。これら様々な職種の関係者が香港に集結し、野心のゲームに戯れる。

情報小説としても非常に密度の濃い物であり、さらに中国、イギリス、日本の三つ巴にそれぞれ個人的な利害が絡んで様々な人間が密約文書を奪い合う緻密な構成(正直なことを云えば登場人物表が欲しかった)、結末に向けて徐々に高まる緊張感など、とても新人とは思えない筆運びである事は認めるにやぶさかではない。
しかし哀しいかな、私はフリーマントルの読者であり、同じ国際謀略小説を発表している同作者と比べるとやはりフリーマントルに一日、いや数年の長があることを認めなければならない。なぜならフリーマントルにはそれらに加えて、ミステリマインド豊かなサプライズがあるからだ。この有無の差はやはり大きい。
片や作家生活数十年のベテランと比べるとはなんとも手厳しい評価ではないかと思うなかれ。これは私が服部氏にそれほど期待をかけていることの表れだと思って欲しい。それほどのクオリティがある作品であると宣言しよう。

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