home

ミステリの祭典

login
ホット・キッド

作家 エルモア・レナード
出版日2008年01月
平均点8.00点
書評数2人

No.2 7点 猫サーカス
(2021/09/21 19:05登録)
映画「俺たちに明日はない」のボニーとクラウド、「明日に向かって撃て!」のブッチとサンダースを彷彿とさせる登場人物たちが、実にいい味を出している。禁酒時代のアウトローたちは不思議と魅力だ。元海兵隊員の父親をもつカール・ウェブスターが初めて人を射殺したのは十五歳の時。牛泥棒を二百メートルの距離から撃ち殺したのだった。その後カールは連邦執行官補となり、早撃ちとして有名になる。彼が土壇場で犯人に警告する台詞は「おれが銃を抜くことになったら、必ず撃ち殺す」。その言葉通り、犯人が引き金を引いた時には、既にカールの銃は発射されている。名声に溺れることなく、淡々と職務を果たしていくカールに絡むのが、富豪の息子で性根の腐った悪党ジャック、カールの仕事ぶりを熱心に取材する記者、肝っ玉の据わった赤毛の美女ルーリー。銀行強盗が日常茶飯事でジャズが流行した禁酒法時代の雰囲気を満喫しつつ、正義と悪の戦いをたっぷり堪能できる。

No.1 9点 Tetchy
(2009/08/15 23:41登録)
レナード節が冴え渡るレナードしか書けない男たちの物語、しかも自身の原点であるウェスタン小説である。
本作の主人公カール・ウェブスター、レナードの作品では今までにないヒーローである。
執行官補である彼は真っ当な正義漢ではなく、実は根っからのガンマンなのだというのが白眉。
その彼のライバルとなるのがジャック・ベルモント。親の手の付けられない悪童がそのまま大人になった男で、根っからのワルである。
しかしここからがレナードの味付けの妙で、このジャックはカールと渡り合うほどには器が大きくならない。ずっと歯牙にもかけられないのだ。

そして最後に迎える2人の対決シーンの結末も意外。ここにカタルシスが欲しかった。まあ、レナードらしいといえばレナードらしいが。

しかし西武開拓時代に腕を競い合った実在の銀行強盗ら悪漢達が躍動する物語は非常に楽しかった。
レナードはまだまだ枯れない!

2レコード表示中です 書評