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ミステリの祭典

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傍聴者

作家 折原一
出版日2020年11月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 4点 E-BANKER
(2021/10/02 09:11登録)
文藝春秋社で折原といえば、そう、足掛け20年以上も続く「~者」シリーズである。
六年ぶりの最新刊となる今回のタイトルは「傍聴者」ということで、当然裁判絡みのお話となる。そして、下敷きとなった現実の事件は例のあの「毒婦」の事件だろう・・・。2020年の発表。

~交際相手に金品を貢がせ、練炭自殺に見せかけて殺害した牧村花音。平凡な容姿の彼女になぜ男たちは騙されたのか。友人を殺されたジャーナリスト・池尻淳之介は、真相を探るべく花音に近づくが・・・。彼女の裁判は「花音劇場」と化し、傍聴に通う女性たちは「毒っ子倶楽部」を結成、花音は果たして毒婦か?聖女か?~

ウィキペディアによると、「~者」シリーズは本作で第14作目とのことである。
並べてみると、①「毒殺者」(1992)②「誘拐者」(1995)③「愛読者」(1996)④「漂流者」(1996)⑤「遭難者」(1997)⑥「冤罪者」(1997)⑦「失踪者」(1998)⑧「沈黙者」(2001)⑨「行方不明者」(2006)⑩「逃亡者」(2009)⑪「追悼者」(2010)⑫「潜伏者」(2012)⑬「侵入者」(2014)⑭「傍聴者」(2020)、となる。(※但し、①③は当初別タイトルで発表され、後で改題されたもの)

いやいや、よく続いたもんだねぇ・・・。数多のミステリー作品が量産される昨今、こんなに長きに亘って愛されてきた(?)シリーズも珍しいのではないか。
新聞の三面記事に取り上げられるような現実の事件を題材に取り、うだつの上がらないノンフィクションライターが、事件の真相を探るうち、まるで底なし沼に絡めとられるように、事件そして関係者の渦に巻き込まれていく・・・。同じようなプロットを使いながらも、作者の卓越した叙述トリックのバリエーションで読者を手玉に取っていく。
何よりも、「現実」と「虚構」の狭間をうまい具合にぼかしながら、読者に「一体なにが起こっているのか?」という思いを抱かせ、頁をめくる手を止めさせない技術。こんなのは折原にしか書けない、いや書こうとしないジャンルだと感じる。
個人的ベストは世評も高い⑥かなぁー。改題された①③はともかく、初期の作品は叙述トリックにも新鮮味があって、「驚き」のレベルも高かったように思う。まぁどうしても後半にいくほど、プロットにも無理矢理感が出てくるのはやむを得ないところだろう。

えっ!? 本作の評価は!って?
まぁ・・・いいじゃないですか。作者の六年間の想い、いや苦悩を表すかのような出来、というところでしょうか。
ハッキリ言えば、『ネタ切れ』なんでしょう。でも、そんな私の感想を裏切るべく、15作目が発表されることを祈っております。(何年かかるかな?)

No.1 6点 蟷螂の斧
(2021/03/20 17:26登録)
裏表紙より~『交際相手に金品を貢がせ、練炭自殺に見せかけて殺害した牧村花音。平凡な容姿の彼女に、なぜ男たちは騙されたのか。友人を殺されたジャーナリスト・池尻淳之介は、真相を探るべく花音に近づくが…彼女の裁判は“花音劇場”と化し、傍聴に通う女性たちは「毒っ子倶楽部」を結成。花音は果たして、毒婦か?聖女か?裁判が辿り着く驚きの結末とは。』~

被告の牧村花音は男達に貢がせたことや、彼らとの肉体関係を赤裸々に語るも、殺人だけは犯していないと無罪を主張する。彼女が逮捕に至るまでの過程が作家・池尻の手記で綴られる。「倒叙」ものなので、どのような形で「叙述」を取り入れるのか興味は尽きなかった。単純な物語を複雑な物語(叙述)にする手腕を評価したいと思います。

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