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ミステリの祭典

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スワッグ
スティックシリーズ

作家 エルモア・レナード
出版日1993年08月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 tider-tiger
(2019/10/09 21:07登録)
~小悪党スティックは車を盗んだ現場を目撃されて逮捕される。ところが、その目撃者は現場でスティックと会話まで交わしたにも拘わらず、法廷で犯人はスティックではないと証言する。スティックは裁判の後この目撃者に声をかける。男の名はフランク。フランクはスティックに『成功と幸福をつかむための十則』をぶち上げ、「もっとも効率のよい犯罪」を一緒にやらないかと持ち掛ける。~

1976年アメリカ作品。『スティック』の前日譚である。
導入はソーメンのようにツルツルと入って来る。冷静に考えるとリアリティに難ありだが、自然で軽妙な会話についつい引き込まれてしまう。「リアリティ? そんなの関係ねえ」のである。軽妙な会話で引っ張り、鮮やかな場面転換がさらにテンポよく読ませる原動力となっている。
プロットは大筋のところでは単純である。ただし部分部分に粋な趣向が仕込まれていて飽きさせない。個人的にはラストが大好き。なんというか……
本作執筆時はまだまだ売り出し中だったが、すでにエルモア・レナードらしさは十全に発揮されている。
エルモア・レナードらしさ……例えば『スプリットイメージ』という異常心理を扱った作品があるが、異常心理ものとして優れているかどうかはともかく、エルモア・レナードしかできないような料理の仕方で、他と一線を画したものに仕上がっている。らしさを理解しやすい作品だと思う。
伊坂幸太郎が好きな方なんかはエルモア・レナードを読むとニンマリできるかもしれない。

考えすぎかもしれないが『ゴッドファーザー』の影響を感じた。
あのシーンはゴッドファーザーの焼き直し? 場面の劇的さでは敵わないが、罠に誘導していく話術の巧みさが素晴らしい。
また、スティックは自分を騙した相手について、あいつは俺に対して好意も敵意も抱いていないと断言する。スティック自身もあいつのことが嫌いではないという。こういう割り切りは「あくまでビジネスなんだ」というゴッドファーザーの世界に通じるものがあると思う。
ゴッドファーザーからの頂きだという確証はないが、本当にそうであったとしたら、エルモア・レナードのタッチに見事に変換した上等なパクリだと思う。パクリには作者のセンスが如実に表れる。

No.1 6点 Tetchy
(2009/08/03 22:56登録)
“成功と幸福をつかむための十則”、武装強盗として成功するための10ヶ条を思いついたフランクと知り合った自動車泥棒スティックが強盗稼業に乗り出す物語。
ただ、物語はレナードのこと、予想外に展開し、ひねって歪んで展開する。
この武装強盗というアイデアは面白いものの、主人公フランクに感情移入できなかったのが瑕。

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