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ミステリの祭典

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神津恭介の回想
神津恭介シリーズ

作家 高木彬光
出版日1996年06月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 E-BANKER
(2025/02/15 14:20登録)
出版芸術社が編んだ”名探偵”神津恭介登場の短編集。
いやいや、もう、油ギトギトという感じ(表現が適当でないかもしれませんが)の作品が並んでいた印象。
単行本は1996年に発表されたもの。

①「死せるものよみがえれ」=まずは初っ端の作品としては妥当なセレクションだろう。つまりは”ジャブ”的な作品。小市民が犯罪を犯すとこのようになってしまう、ということなのだが、最終的には名探偵・神津恭介が颯爽と登場して、主人公を窮地から救い出す。そして指摘される意外な犯人。まっ、意外でもないか・・・
②「緑衣の女」=乱歩の「緑衣の鬼」を意識した作品なのだろうか。こちらは緑ずくめの恰好をした「女」が登場する。しかも「四本指」である。序盤から、それこそ、もう、これでもかというほどに、作者は「緑衣」「緑衣」とあおってくる。さぞかし、ものすごいトリックかと思いきや、うん。この時期のミステリにはありがちな着地点ではある。短編だと登場人物が少ないから、どうしても役割をそれぞれに振らなければならなくなる。そういう感が強い。
③「白魔の歌」=戦前に活躍した名探偵なる人物のもとに届く「白魔」を名乗る者からの脅迫状。過去の名探偵は、「現代の」名探偵である神津恭介の出馬を強く要請する。そして、連続殺人事件が発生するなか、海外出張から戻った神津は、アッという間に真相解明・・・。でもこの動機は・・・
④「四次元の目撃者」=これはなかなか面白かった。まるで四次元の世界のごとく空中に向かって開ける扉。そんな扉がある部屋で起こった密室殺人事件。魅力的な謎ではないか! ただし、密室の解法は、どこかで見たやつだな・・・(もしかしてこれが初なのか?)
⑤「火車立ちぬ」=熊本地方に伝わる言い伝え、それが「鴉」「猫」「狐」の三匹の動物が出てくる不吉な言い伝え。そして、現実に発生した殺人事件にも「鴉」、次の事件には「猫」の幻影が。神津は冷静に推理を行うが、真相はかなりご都合主義でこじつけ感が強い気がする・・・

以上5編。
うん。まずまず面白い作品が並んでいた印象。もちろん時代がかりすぎて、「なんじゃこりゃ?」的な感想のものもありはしたけど、さすがは作者。どこか光るポイントがあるように思った。
短編から長編化したものや、改題したものなど、作品ごとの経緯はさまざま。
ただ、神津恭介の魅力は時代を超えてミステリファンの心に確実に響いている(であろう・・・)
(個人的ベストは④)

No.1 5点 江守森江
(2010/07/27 09:36登録)
書評1000件一番乗りバンザイ!ばんざい!万歳!
記念すべき1000件目は一番好きな名探偵・神津恭介で飾ろう!
ここまでは予定通りだが、悲しいかな本作は、埋もれた作品の復刻作品集(5話収録)でしかない。
しかも別作品や長編として改稿された為に埋もれていた作品達を平成シリーズ(一部の神津ファンには黒歴史)発行に抱き合わせして纏めた感が、ありありとしていて残念でもある。
唯一の楽しみは鮎川哲也でも言える事だが、本作(原点)と改稿作品の読み比べだけであろう。
それでも、読み比べると改稿での工夫などが見えて楽しいのは間違いない。
※読み比べガイド(前が本作収録作品)
「死せる者よみがえれ」→百谷シリーズ「破壊裁判」
「白魔の歌」→長編化
「四次元の目撃者」→「死を開く扉」
「緑衣の女」→「小指のない魔女」
「火車立ちぬ」→「火車と死者」

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