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ミステリの祭典

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神獣の爪
陶展文シリーズほか 短編集

作家 陳舜臣
出版日1992年03月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 6点
(2020/02/16 09:31登録)
 昭和41(1966)年から昭和59(1984)年までの18年間に、雑誌「小説現代」その他に掲載された作品を集めた短編集。あとがきに「私の『集外集』にほかならない」とある通り、連作以外で作品集からもれていたものばかりだそうです。ただ表題作だけはラジオ・ドラマになったり、年鑑やアンソロジーにえらばれたりしていて、てっきり収録済みと思い込んでたそうですが。
 全六篇の中ではやはりその『神獣の爪』がベスト。操りテーマですが、時間を掛けて入念に仕組んでいるので全く不自然さがありません。唐三彩の逸品を無惨にたたきこわすという行為の強さと、摑んだ岩にくいこむ爪のあざやかさが、復讐心の象徴として心に残ります。
 次点は犯人像がちょっと変った色合いの陶展文もの『軌跡は消えず』。大技小技の『描きのこした絵』もいいですが、この作者のものだとお馴染みのパターンなので少々減点。『まわれ独楽』といい、発想はそれほどでなくとも、気の遠くなるような歳月をかけて念入りに事を行い成就させるというのは、老荘思想に代表される中華的思考の基本線ではないでしょうか。
 老境の展文も、淡々とした中に滋味があっていい感じ。残りの二篇もそれぞれに味があり、佳作には到らずとも安心して読めます。点数は少々上乗せして6.5点。

No.1 8点
(2009/07/31 17:57登録)
6編よりなる短編集で、そのうち後半の2編は陶展文シリーズです。安楽椅子探偵物、ユーモア物、本格物と種々そろっています。いずれの作品も、ストーリーが十分に練られているという印象を受けます。うち2編についてコメントします。

表題作は、謎を解くのは刑事ですが刑事物といった感はなく、その刑事が私的に入手した25年前の盗難事件の情報をもとに、とある復讐の謎を解き明かす、というどちらかというと安楽椅子探偵物に近い推理小説です。謎解きロジックはすこし乱暴な感じもしますが、短編なので、むしろそのぐらいのほうが面白みがあります。4編目の「描きのこした絵」は本格ミステリで、仕掛けとして大掛かりなトリックと、物理的なトリックとが用意されています。大掛かりなトリックは少し無理はありますが、やはり短編なら、このぐらいのほうが楽しめるように思います。これら2編は、ほんとうに秀作です。

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