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ミステリの祭典

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弔鐘はるかなり

作家 北方謙三
出版日1981年10月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 8点 斎藤警部
(2021/11/12 05:54登録)
“この男は俺と同じことをしようとしている。◯◯を◯◯◯出すということだけではない。なにか別のものだ。言葉にはならなかった。”

真の「復讐対象」が誰/何なのか、極限まで煮詰めんとする男の物語。 万感迫るラストシークエンスで急転回して、沈着の中に衝撃宿るサドゥンエンド、そこに唐突感が漂わないのは、猛烈な小説家魂が最後まで読者を抑え込むから。 驚くほど純ハードボイルド文体で描かれた登場人物群の鮮やかで立体的なこと! 微妙な翳りが際どい危うさを発する「或る脇役」が実は、、一連の事象と直接の何の関係も無いというポイントは、クリスティ流人間関係トリックに通じる大きなミスディレクションとして機能していよう。 人間関係といえば、最後に明かされる、主人公にとり、そして本小説にとり巨大な真相暴露となるさり気ない台詞と、それを受け止めたその後の会話と、、、このへんはもう本当に最高のハードボイルド記念碑、伸された。 北方謙三ミステリ作家としてのデビュー作にして仰ぎ見る完成度と魅力の坩堝だが、今度こそ売れるためのクソ努力がこれだけプレシャスな果実をアウトプットしただなんて、どこまで素敵な話なんだろう。 私が北川景子を割と好きなのは、北方謙三を無意識に思い出させる語呂の近さに負っている部分もある、という深層心理にも気付かせてくれた。

キーホルダーに付いた鈴の鳴る ’サラン’ という音、何度も登場しますが、癒されますね 。。。  「いい音だ。時々振ってみるのはあんたの癖だね」 ← この台詞。。。。
表題の意味、かなり深い所まで考えさせられます。 「はるか」なのは、何と何の間の距離なのか。 一つには、◯◯を越えた或る距離の意味合いも含まれているのかな。。

“人間にはそういう河があるものだ。ただ渡るためだけに必要な河が。”

最後に、これはネタバレに通じそうですが、、、、 或る重要人物が、実は一度も登場しない!! 。。。。 何から何まで想像させて、泣かせてくれます。

No.1 4点
(2009/07/28 14:00登録)
北方謙三氏の書評登録は本サイトではゼロ。総合ミステリ書評サイトとして寂しいので、ファンではありませんが、すこし盛り上げてみたいと思います。
本作は氏のハードボイルド第1作です。純文学からの転向後に書いた初めてのハードボイルド作品だと思います。これ以後、量産が始まり、驚異的な人気となったのですね。
本作はそんな記念碑的な作品で、すでにこの作品には、北方氏の特徴である短文による描写が随所に見られ、印象に強く残っています。ただ、暴力シーンは肌に合いませんでした。その暴力シーンも得意の短文で描写され、それによる強烈な効果があったのかもしれません。時代小説のちゃんばらシーンだったら、どれだけ血が流れようと気にならないのに、不思議ですね。
当時、あれほど流行った北方ハードボイルドも、今は影を潜めています。今書いたとしても、売れないのでしょうか。氏の時代物をあまり読んでいないのでわかりませんが、たぶん、時代物、中国歴史物のほうが(氏の風貌にも)似合っているのでしょうね。現代物ならともかく、時代物、中国物は十分な調査と取材が必要なのに、どうしてあんなスピードで書けるんでしょうか?本当に凄いです。

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