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ミステリの祭典

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マイアミ欲望海岸

作家 エルモア・レナード
出版日1988年02月
平均点4.50点
書評数2人

No.2 6点 人並由真
(2020/10/15 14:42登録)
(ネタバレなし)
 1980年前後のマイアミ。マフィアの大物だが現役を引退していたフランク・ディリシアが61際で死亡した。彼は400万ドルの遺産を、毎年相応の金が支払われる形で44歳の美人妻カレンに遺す。その遺産を管理するのは、フランクのマフィア仲間で旧友であるエド・グロッシが運営する財産管理組織「ドラド・マネージメント」だ。だがフランクは生前に浮気をカレンから追及された意趣返しのつもりかエドに頼んで、カレンが再婚はおろか男性と付き合ったりしたらお金が入らなくなるシステムを用意していた。この事実に気づいて対抗策に躍起になるカレン。一方でエドの部下でカレンのBFを脅迫する役目のゴロツキ、ローランド・クロウは、任務の裏に潜む事情を知って、ある野心を抱く。かたやカレンの周囲には、流れ者の36歳の裏世界の男カルヴィン・マグワイアが寄ってきた。

 1980年のアメリカ作品。
 評者はレナード作品はまだ2冊目だが、400ページ弱の文庫をいっきに読了。たぶんそんな作風だろうなと思っていた猥雑な雰囲気の物語を、十分に楽しんだ。
 
 故人が遺言で、遺産相続者の今後の異性関係に条件を設け、事実上拘束する、といえば日本の横溝の『犬神家の一族』だが、どっかでああいう個人(相続人)の自由を奪う遺言は、本当は法律上は無効なのだという指摘を読んだ覚えがある。
 その認識が記憶違いでなければ、たぶん今回も本当は筋の通らない設定なんじゃないかとも思った(国ごとによって、法律の細部の差異はあるにせよ)。
 だがその辺の微妙さは作者レナードも心得ているらしく、法律の妥当性がどうのこうのというよりも、マフィアの集団が大物だった故人の遺志とメンツを守るために強引にカレンのBFを追っ払っているという状況を語る(その実行役の主体がローランドだ)。

 とにかくカレンが400万ドルものカネを相続したという事実を知ったローランドと、金は欲しいがそれ以上に本気で? カレンに惚れてしまったマグワイアの対決を後半のドラマの縦糸のひとつにしながら、物語はその周辺に多様な登場人物を配置。

 陰惨な描写はそんなに多くない一方、独特な緊張感や印象的な人間模様はたっぷりと語られ、とにかく退屈しない。
 レナード作品に慣れた玄人のファンには物足りないのかもしれないが、この作者の作品のほとんどビギナーであるこちらには、フツーに面白かった。
 
 女性の総称で「ガール」なら普通に娘っ子だが「ウーマン」というと掃除婦を連想するという物言いとか、少年時代から女のスカートをめくることにときめきを覚えていたとか、それなりにカッコイイのに妙にヘンな一面を見せる男性主人公マグワイアのキャラ造形も、ちょっと印象的。この辺をふくめて、いわゆるレナード・タッチか?
 またそのうち、この作者の作品は何か読もう。

 評点は7点でもいいんだけれど、前回の『ミスター・マジェスティック』同様、この作者にはおそらくもっとスゴイものがあるんだろうなという予測と期待を踏まえて、とりあえずこの点数で。

No.1 3点 Tetchy
(2009/07/21 23:05登録)
なんとも陳腐な邦題である。なんか別のジャンルの本と勘違いしそうだ。
これはまだレナード初期の作品で、先の読めない展開は健在なものの、どちらかといえば何も考えずに書いているような感じがしないでもない。
読者をいかに裏切るかがレナードの腕の見せ所なんだけど、これは途中で放棄したとしか思えないほど雑。
キャラクターもほとんど記憶に残らなかった。

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