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ミステリの祭典

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コカイン・ナイト

作家 J・G・バラード
出版日2001年12月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 5点 あびびび
(2010/06/23 16:22登録)
スペインの高級リゾートで「脳死状態」にある移住民に「犯罪行為」をもって人間の本能を蘇らせ、街を活性化させるというSF感覚も織り交ぜたサスペンス。

結末は驚愕…ではなかったが、英国ナンバー1作家と言われただけあって巧みな文章に完成された構成力。読み返す必要性は感じなかったが、一読のお薦めはできる。

No.1 8点
(2009/07/03 20:44登録)
バラードが亡くなってから2ヶ月以上もたって、やっと追悼の読書です。
舞台はスペインのリゾート地にあるコミュニティー。5人の死者を出した邸宅の放火殺人事件で逮捕された弟の無実を証明すために、兄が独自の調査を進める姿を一人称形式で描いていくという、粗筋だけだと普通のミステリです。イメージ喚起力のある比喩を使った文章もあわせ、最初のうちはロス・マクドナルドをさらに晦渋にしたような感じも受けました。
ところが、後半に入ると、真相探索はほとんど一時おあずけになり、それまでは見え隠れしていた程度だったこの作者らしいテーマ性が一気に表に出てきます。数年前の『殺す』でも扱われていた、完全管理されたコミュニティーの問題点が、別の角度から描かれていくのです。
そして最後にそのテーマ性と放火殺人事件の真相とが融合され、ショッキングな結末を迎えます。途中である登場人物が「『サイコ』のスタイルでリメイクされたカフカ」というせりふを口にしますが、この結末はカフカ的不条理な怖さです。特に気味が悪いのは、「地下世界への招待」の章で明かされる真相のすべてが本当のことなのかどうか、ラスト・シーンに至ってみるとわからなくなってしまうというところです。

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