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ミステリの祭典

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五瓣の椿

作家 山本周五郎
出版日1959年01月
平均点7.50点
書評数2人

No.2 8点 斎藤警部
(2017/05/17 21:15登録)
「あたしに力を貸してください。。」

この小説は構成が上手いです。目くらましが仄めかしを僅差で凌駕する「序章」のエネルギーは磨耗を知りません、自ら勢いを落として着地する最終章まで。。
舞台は江戸の天保期。「両親と共に火事で死んだ筈の商家の娘」らしき若い女が繰り広げる「父の仇たち」への連続復讐劇です。

緊迫の序章、重く鮮烈な抒情に摑まれる第一章滑り出しを経て、第一のクライマックスをスピンアウト形成する数ページ、起伏の三段跳びには思い切り呑み込まれました。。この激しさはそのまま、物語の終結を容易に見透かさせない煙幕でもあり。。
中盤より、攻めまくりと追い詰められの折半予見も却っていじらしいほどの水際立ち。悍(おぞ)ましいようでいて凛々たるクライマックスには瞠目、探偵役のシャッキリした格好良さも印象に残ります。

読中、ジャプリゾ「殺意の夏」と東野「白夜行」を少しずつ思い浮かべるようなところもあり、、などと余計な仄めかしを最後にしておきます。 この如何にも渋そうな時代作品に、少しでも皆さまの興味を惹くことを期待し。

No.1 7点
(2009/06/17 12:33登録)
(動機についてネタバレを含みます)



ミステリ仕立ての復讐劇、と一般的には言われていますが、ミステリ仕立てというよりも、間違いなく本物のミステリだと私は思います。周五郎ですから時代物です。だから、本格ミステリというわけにはいきませんが、文章力、プロットは抜群で、どちらかというと物語性を楽しむミステリ作品だと思います。個人的には「復讐」という言葉を聞くだけでワクワクするほうなので、もちろん申し分なく楽しめました。

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