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ミステリの祭典

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天空高事件 放課後探偵とサツジン連鎖
〈迷探偵黒彦〉シリーズ

作家 椙本孝思
出版日2009年03月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 5点 メルカトル
(2025/06/03 21:59登録)
私立天空高校の校舎屋上から、一人の女生徒が飛び降り自殺をした。騒然となる中、白鷹黒彦は、なぜか「天空高探偵部」部長の夢野姫子に目をつけられ、調査をすることに。果たしてこれは本当に自殺なのか!?
Amazon内容紹介より。

まあまあですね。主な登場人物のキャラ設定は確りしていて、それぞれ個性的で読み易いです。やや長尺ですが会話文多目なので苦になりません。しかし、どこか既視感があり新味がありませんね。過去の作品で動機と言いプロットと言い、似たようなものが幾つもあった気がしてなりません。

動機に関して言えば、どうしてそこまでする必要があるのかなと思わざるを得ませんでした。もう少し穏便に済ませるやり方はいくらでもありそうなのに・・・。わざわざ連続殺人事件に仕立て上げて真相がこれでは、さすがにミステリ読みとしては納得いかないでしょうね。
まあ読み物としてはそれなりに面白かったですよ。しかし、ダイイングメッセージの件が納得いかない点があったり、警察の介入を完全に封印してしまうのは如何なものかと、疑問に思いました。警察は何していたんだろうなあと余計な詮索をしたくなります。

No.1 5点 人並由真
(2020/10/11 04:02登録)
(ネタバレなし)
 夏休み中に、悪夢のごとき「魔神館殺人事件」に関わった高校生・白鷹黒彦。二学期を迎えた彼は母校の天空学園高等部に登校するが、そこで彼を待っていたのは、同じ二年B組の女子生徒・雛菊雪子が校舎から転落して死亡したという悲報だった。雪子が参加していた「天空高校探偵部」の部長・夢野姫子によって、強引に同サークルに入会させられた黒彦。彼は部員仲間の女子たちと、雪子の転落死が他殺という可能性を審議するが、不穏な空気の校内ではさらに新たな惨劇が発生する。そんななかで黒彦が再会したのは、魔神館事件で関わりあった天才青年・犬神清彦とその妹の中学生・果菜(はてな)だった。

 白鷹黒彦&犬神兄妹シリーズの第二弾。評者は今回、本サイトに現状で登録のない2012年の角川文庫版(単行本から一部、改訂らしい)で読了。
 
「館もの」の前作を受けて、今回はガラリと趣向を変えた青春学園ミステリ。

 綾辻の「館シリーズ」へのオマージュか<物故した異才建築家の遺した、特殊な建築物のなかでの殺人>という設定が今回も用意され、その流れで、物語の舞台となる天空高校に伝えられる「学校怪談」もミステリの重要な? 一パーツとなっている。
 
 ただしある種の破格さで勝負した前作と比べて、今回は全体が地味でオーソドックスな学園殺人ミステリ仕上げ。総体的には、どっかで見たような類型的な作品となった。

 500ページ近い紙幅の厚さは、文章の平明さと物語世界の居心地の良さでまあ問題なく、しのげる。
 が、一方でミステリとしては最後の真相を明かされて、うーん、この解決でどうなんだろ? と思いたくなるような部分も無きにしも非ず。特に(中略)の殺人に至る流れは、あまりに説得力がないし、そもそもストーリーの組み立てにも疑問が生じる。あと文庫の巻頭の、主要登場人物一覧ですが(以下略)。

 読んでいる間はそれなりに楽しかった。が、最後まで読了して残念ながら、今回は出来の悪さが気になってしまう。
 シリーズの残り二冊で挽回してくれることを、期待したい。

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