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ミステリの祭典

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海は涸いていた

作家 白川道
出版日1996年01月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 9点 Tetchy
(2011/10/19 21:20登録)
物語を彩るキャラクターのなんと濃密なことか。どこかで読んだような、借りてきたような人物ではなく、生活から人生の道程までしっかりと顔の皺まで浮かびそうなくらい書き込まれている。処女作でも感じたがやはりこの人は“世界を知る人”なのだろう。この人でないと書けない雰囲気が行間から立ち上ってくる。

作中主人公の伊勢が幾度か呟く。

生にはこれから生きることがはじまる生と、これから死ぬことがはじまる生とがある

この言葉が象徴するようにこれは死に様を探し続けた者が生き方を見つけようとした者を救うための物語なのだ。
つつましく生きたいのになぜか人生の節目で裏切られ、真っ当な人生を進むことを否定される人々を書く物語は志水辰夫の作風をどこか思わせた。

特に上手いと思ったのは伊勢孝昭として他人の名を借りて生きてきた芳賀哲郎が本名に戻った後だ。それまでは伊勢孝昭としかイメージできなかった人物が、ある事件―布田の死―をきっかけに本名の芳賀哲郎としての空気を纏い、もうそれ以降は芳賀哲郎とでしか読めないのだ。同じ人物でありながら主人公が2人いるような感覚。
それは前半が会社の経営者の伊勢の物語から、施設時代に弟・妹のように可愛がっていた慎二と千佳子を守る兄、そして友人の無念を晴らす戦士である哲郎の物語へとシフトするのにこの名前の変更は実に有効的に働いている。

No.1 4点
(2009/05/24 10:19登録)
現代任侠物という感じ。
好みの話だが、役所広治主演の映画(絆)を観た後で読んだので、印象が薄かった。
ハードボイルド調だったけど、そうでなくてもよかったのに、と思いました。

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