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ミステリの祭典

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刈りたての干草の香り
カーク将軍

作家 ジョン・ブラックバーン
出版日2008年02月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点 クリスティ再読
(2022/02/22 20:50登録)
ブラックバーンはデビュー作からブラックバーンだった。

主人公はイギリス外務省情報局長のカーク将軍だから、ブラックバーンらしく国際陰謀?というニュアンスで始まる。事件の最初の現われはソ連国内、それも白海沿いの辺鄙な地帯をソ連当局が極秘に封鎖したことの報告を、カーク将軍が受けるところから始まる。イギリス商船の沈没とそれを議題にする国連の会議で、ソ連代表が明らかにしたのは、未知の感染症のアウトブレイクだった...国際謀略は何だったのよ。

で、この病気なかなかエグいんだけど、それは読んでのお楽しみ。ブラックバーンだから、そんな「黙示録的な悪意」は人のかたちも取っている...だから、アウトブレイクものから、分かりやすいスリラーに。でもスリラーになってくると、とたんにスケールダウンして怖さがなくなるんだなあ。そこらへん、改良の余地がある。たぶん「薔薇の環」は、そういう本作の今一つの面の改善版なのだろう。
「薔薇の環」が本作の上位互換だと思う。

まあ、それでもカークの部下の情報局ソ連部長とか、ドイツの諜報部?のフォン・ツーラーとか、スパイ系のキャラに面白味がある。やはりブラックバーン、一癖あるキャラは最初から上手。

No.1 6点 kanamori
(2013/01/24 14:47登録)
英国情報局長のカーク将軍らが、地球滅亡の危機から人類を救うため活躍するという、文芸的なタイトルからは想像もつかないB級感あふれる怒涛のホラー&冒険スリラー・シリーズ第1作。

ソ連の片田舎での奇妙な出来事を発端に、突然変異体という”怪異の正体”をぼかしながらも徐々に明らかにしていく手際が巧く、深夜テレビの再放送ホラー映画をみるようなゾクゾク感を味わえるw
 東西冷戦時代ならではのスパイ小説的な展開や、旧ナチスドイツの天才女性科学者の陰謀など、300頁にも満たない分量で、よくこれだけネタを詰め込んだものだと感心します。
人類の危機に対処するのが将軍らと若い生物学者夫婦のわずか4人(後の主役の1人、レヴィン卿は本書にはまだ登場しない)だったり、地球規模の陰謀のわりに謎の首謀者がすぐ身近にいたりで、突っ込みどころも多いですが、これが予想以上に面白かった。

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