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ミステリの祭典

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赤い列車の悲劇
列車シリーズ

作家 阿井渉介
出版日1991年07月
平均点4.50点
書評数2人

No.2 5点 E-BANKER
(2016/03/13 16:36登録)
1991年発表の「不可能犯罪シリーズ」七作目。
本作では牛深警部とコンビを組む“天敵”松島刑事が一切登場しない・・・というのが珍しい。

~嵐の朝、岐阜・富山両県にまたがる神岡鉄道を走る「おくひだ一号」の運転士は、あるべき場所に駅がなく、線路まで消えていることに驚く。一方、終着駅の駅員は列車が乗客とともに消失したことを知らされる。だが、駅・線路・乗客・車両の四重消失は不可解極まる事件の発端でしかなかった。犯人からはビデオテープを全国のTVで放送せとの奇妙な要求が!~

列車を舞台とした壮大なトリックと社会派的背景のミックスが特徴の本シリーズ。
走行中の列車から車両が一両だけ消えた前々作「列車消失」や、一車両の乗客が全員消えた前作「Y列車の悲劇」など、とにかく「無理だろう・・・」という不可能を可能に変えてきたシリーズなのだが・・・
本作は何と、①駅②線路③乗客④車両、の四重消失というスケールのデカさ!
何もここまでやらなくても・・・と思わざるを得ないのだけど、ミステリー好きならやはり期待してしまう設定。

でもこれはなぁ・・・
敢えて「動機」や「背景」の問題には触れないけれど、ひとことで言えばズバリ「絵空事」だ。
事件に関わった人数でいうと過去最大級ではないか?
トリックの説明は相当あっさり片付けられてるし、そもそも人間の五感ってそこまで鈍感ではないだろう。
(走行中の列車を○○して、○○するなんて、あまりにも荒唐無稽ではないか?)

「動機」には触れないって書いたけど撤回。
この動機は理解不能だし、これでは壮大なトリックの必然性がまるでないことになる。
シリーズものは回を追うごとにスケールアップしていくのかもしれないけど、リアリティも大事だよなぁー

これは本格ミステリーというよりは一種のファンタジーなのかもしれない。
最終章で牛深警部と真犯人が酒を酌み交わすシーンがあるのだが、要はこれが書きたかったのかな、作者は。
いずれにしても高い評価はできない。

No.1 4点 nukkam
(2011/10/03 21:46登録)
(ネタバレなしです) 1991年発表の列車シリーズ第7作です。「駅、線路、車両、乗客の四重消失」(正確には2つの二重消失だと思いますが)というスケールの大きな謎も十分に魅了的ですがこれだけではなく、中盤にかけてどんどんと謎が追加されて一体どう解決するのかと心配になるほどです。そしてその心配があたってしまったというか、この何でもあり的な真相は本格派推理小説好きの読者には受けにくい真相だと思います。社会派推理小説の要素も非常に濃いですが、リアリティー度外視の真相は社会派好き読者に受けるかもやはり未知数です。傑作か凡作かという分類を超越した、怪作というべき作品でしょう。

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