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ミステリの祭典

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猿若町捕物帳 巴之丞鹿の子
猿若町捕物帳

作家 近藤史恵
出版日2001年10月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 6点
(2014/11/10 09:24登録)
軽めのミッシング・リンク物。
物語はシンプル、文章は流麗。読み心地は抜群だった。
ミッシング・リンク物なのに、シンプルという語句はほめ言葉にならないだろうが、解説にもあるように、よけいなものを削ぎ落として、透きとおった感が出ているので、いい意味でシンプルにみえてしまう。

まず、登場人物に江戸時代らしいおおらかさ、のびのびさが出ているのが好ましい。
主人公の同心・玉島千蔭は堅物だが、えらそうな物言いはせず、おっとりしている。性格が正反対で、くだけた感じの親父・千次郎もまた良し。人物設定のうまさを感じる。
町娘のお袖と、侍の小吉との関係にも笑える。彼ら二人が登場する最初の数ページで、この話はほんとうにミステリーなのか、と首をかしげた。
千蔭と小吉の二人はキャラが似ているようにも思えたが、その起因するところが大違いなのがおもしろかった。
謎解きよりも、そんな人物描写がいちばんだった。

本格物でもあるが、仰天の真相が待ち受けているというほどでもないので、サプライズを期待する読者には物足らないかもしれない。派手なトリックはもちろんなし。地味で渋めのテクニックに目を凝らしながら読むのもいいだろう。
とにかく、人情物ではないにしても、江戸の人間模様を愉しむぐらいに考えて臨むほうが絶対に楽しめるだろう。

No.1 7点 テツロー
(2002/07/10 00:23登録)
 時代ミステリ(捕物帳)など、初めて読んだかな。少々ネタばれ有り。
 姉弟相姦や、サド・マゾといった、インモラルなエピソードが所々出てくる。あまり突っ込んだ描写ではなく、テーマでもないので、必然性が感じられず、最初読んだときは「何だ?」と疑問符だった。再読したら、まあ、ゲストキャラの、物語が閉じた後の行く末が決して平坦なものではなくとも、強く生きていくことができるということを感じさせる為の、ワン・ステップだったのだと読めなくも無い。
 ミステリとしては、「ABC殺人事件」の変型、かな?ミス・ディレクションがあまり生きてないように感じた。
 堅物の主人公、玉島千蔭は良いキャラですね。親父さんも子分の八十吉も、良いチームだ。

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