配当 競馬シリーズ |
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作家 | ディック・フランシス |
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出版日 | 1983年01月 |
平均点 | 5.00点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 5点 | 雪 | |
(2018/11/27 16:58登録) 妻セアラとの冷ややかな関係に悩む中等学校の物理学科教師ジョナサン・デリイ。彼は夜半、同じく子供を持てない夫婦仲間であるピーター・キースリイからの電話を受けた。彼の妻ドナが他人の赤ん坊を盗んだというのだ。 気乗りせぬままセアラに引き摺られるようにノーフォークへ向かうジョナサン。結婚前の彼らは、ジョナサンを兄とする兄弟姉妹のような関係だったのだ。彼はピーターを荒れた家からパブに連れ出すが、パブでの会話で、客から競馬のコンピューター・プログラム作成を請け負ったこと、その直後、プログラムを渡すよう二人の男たちに脅迫されたことを知らされる。 そして帰り際に押し付けるように、ピーターから渡される三本のカセット・テープ。その二日後、彼はキャビン・クルーザーの燃料爆発による事故で死亡した・・・。 競馬シリーズ第20作目。平均して三度に一度は当たるという、競馬必勝システムを巡る争奪戦。第一部の語り手はオリンピックの射撃選手でもある兄ジョナサン。それから14年後の第二部の語り手は、大物競馬関係者の臨時代理人を務める弟ウィリアム。二部構成ですがあまり効果を挙げていません。 傑作「利腕」前後のフランシスは色々目先を変えているのですが、「試走(競馬シリーズ失敗作の一つ)」のように完全に滑ったものもあり、本書も疑問符が付く出来映え。 まず殺人を犯していながら警察の存在をまったく考慮に入れないなど、メインの敵キャラがお間抜け過ぎること。いつものボスの使い走り程度の存在です。対照的に第一部の主人公ジョナサンは冷静強力なので、敵との均衡が取れていないこと。凶暴かつ執拗、しかもアホな相手なので、二部の主人公ウィリアムは勢い敵の面倒を見続けるような格好になってしまい、展開がスッキリしないことなどです(最初のあたり「もう来ないんじゃないか」と言って恋人と寝ていると、ドアをブチ破って敵が入ってくるとか、ギャグめいたシーンもあります)。 このしつこく絡んでくる相手をどうするか。結末は意外といえば意外ですが「うーん」という感じですね。少し都合が良すぎるような気もします。色々工夫もありますが、総合的に判断してあまりお奨めはいたしません。4.5点。 |
No.1 | 5点 | 空 | |
(2013/06/30 18:49登録) フランシスの異色作で、前半と後半の2部に分かれ、兄と弟それぞれの一人称形式で書かれています。その2部の間に14年の歳月が流れているのですが、現在から見るとそのような間をあけるのが不向きなアイディアでした。的中確率1/3という競馬予想システムのプログラムを記録したカセット・テープを巡る話で、1981年作というと、確かにその頃はコンピュータ・ソフトをテープに記録していましたねえ、と懐かしく思い出すのですが、その後すぐに今でもまれに使われるフロッピー・ディスクに取って代わられますから。 まあコンピュータに関する知識と将来予測についてはさておき、他の面でも2部構成にしたことに不満はあります。本作の悪役はこの作者の中でも特に知性に欠けるのですが、14年後にも何の進歩も見られず、後半の話が単純すぎるのです。ラストは意外性があるとは言えるかもしれませんが。 |