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ミステリの祭典

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カディスの赤い星

作家 逢坂剛
出版日1986年07月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 6点 クリスティ再読
(2024/10/25 16:14登録)
さて1987年度協会賞受賞作。80年代後半の日本産冒険小説の盛り上がりの一翼を担った作品でもある。

PR会社勤務の中年男の主人公は、取引先の楽器会社からの依頼で、本場スペインからのギター製作者ラモスを招聘する企画を主導する。その老ギター製作者の内密の依頼で、とサントスという通り名のギタリストを探すことを依頼された..しかしこのサントス、実はラモスの元からかつてダイヤを埋め込んだギターを盗んだ過去があり、実はそのギターを何としても取り返したい、という裏の狙いがあった。主人公はこのギタリストが遺したわずかな手がかりを追っていく...ラモスに同行したその娘フローラと恋仲らしいギタリストのパコが、このサントスの息子では?という疑惑も浮上し、なおかつフローラの背後にスペインの過激派組織の影が見え隠れする。ラモスの怒りを買ってフローラはスペインに戻されるが、どうやらパコは例のギターを持ってスペインに渡ったようだ。主人公はフローラとパコとギターを追ってスペインへ..

こんな話。この作品読み直して、主人公の気取りっぷりなど、バブル期のイケイケな高揚感が甦るんだよね。実は作中ではフランコの死や過激派テロと絡めて1975年の話になっているんだけど、そうだとするとサントスがスペインに渡ってギターを盗んだのが1950年代になって、戦後じきで日本人の海外渡航が強く制限されていた時代になる。辻褄合わないよ。ホイチョイとパラレルな時代の物語として読んだ方が、ずっといいだろう。

というかね「Japan as No.1」のこの時代に日本人が「自信」を持ったことが、とくに海外を舞台とした冒険小説の隆盛に繋がったんだと思うんだ。そのような時代の証言が久々に読むと感じ取られて面白い。

作品的には、スペインでフランコ暗殺を止めようとするあたりから、話がつまらなくなってくる。前半のサスペンスを後半まで維持できないような印象。サントスの正体とか「意外!」と言わせたかったんだろうけど、どうも人物像との整合性に疑問符が付く。

前半面白いのに、その面白さを後半が台無しにしていると思う。評価このくらいにしておこうか。

No.2 7点
(2018/10/30 19:41登録)
当時はハードボイルドとして読んだ。スペインの異国風情は満載。
東西のハードボイルドを含めて一番好きなヒロインだが、結局彼女もハッピーエンドに辿り着けなかった。実に惜しい。
ハードボイルドは常にこういうことになり、仕方がない。なぜ悲劇を好まないオレはハードボイルドに惚れたのか。

No.1 5点 ElderMizuho
(2008/12/13 14:00登録)
サスペンス部分は楽しめたが、どうせならスペイン内戦の部分はもう少し突っ込んで欲しかった。
あとはせっかくのヒロインがただの慰みものみたいな扱いになっているのはあんまりだ。
どうもかなり内容が修正されているらしいので修正前はもっと日本で活躍してたんだろうが・・残念

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