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ミステリの祭典

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スポンサーから一言

作家 フレドリック・ブラウン
出版日1961年01月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 7点 クリスティ再読
(2025/06/10 17:21登録)
ブラウンって子供の頃に大人気だった覚えがある。星新一ブームの中で「星新一が好きなら次はブラウン」って流れがあったんだ。そんな経緯で昔読んだ。

この短編集の前半はショートショート。後半は文庫50ページ超の「地獄の蜜月旅行」「闘技場」があり、30ページほどの表題作。宇宙戦争を回避するために選ばれた戦士よる決闘で文明の興廃を決めるアイデアでガチSFな「闘技場」は、面白いけどもこれブラウンじゃなくても書けるかな。汎用的なSFアイデアでもはや大古典。

そうしてみると「スポンサーから一言」は何というかブラウンらしい話だとも思う。これは「神さまから一言」でも「地球から一言」でも成立しない話だというのが鋭い。「スポンサー」という曖昧で放置せざるを得ない話者だからこその効果、というのがイイ。スポンサーからのあからさまな誘導には、誰しも反発をおぼえるという普遍の人間心理は、今ハリウッドでまさに起きていることの原因でもあるわけだ。ある意味「永遠のSF」かもしれないな(苦笑)

他の作品でも見受けられるけども、ブラウンって一種のリドルストーリーな傾向があるんだよね。「スポンサー」だってそうだし、あるいはもっとジョーク仕立てにした「かくて神々は笑いき」や「翼のざわめき」もそうだし、ショートショートだと「鏡の間」はそういう合わせ鏡の想像力。矛盾する論理の間で置いてきぼりにされて、読者が戸惑うのをブラウンは意地悪くニヤニヤ眺めている。

とはいえとてもアメリカンなホラ話の良さもあるわけで、わざわざ人類のサンプルにアル中を選んでしまい、動物園に収容された酔っ払いの天国「選ばれた男」とか笑えるよ。

もちょっとブラウン、やってもいいかなあ。

No.1 6点 人並由真
(2023/05/16 06:43登録)
(ネタバレなし) 
 ショートショートと、通常~やや長め?(中編とまではいかない)の短編群を混ぜこぜにして、21編収録。

 大昔、少年時代に初めて手にしたときは、全部がショートショートではないという不均一ぶりに何か引っかかりを覚え、途中で読むのをヤメていた。
 それからウン十年、家の中から出てきた本を、最初から読み直してみる。

 前半にほぼ集中して掲載されている、口当たりの良いショートショートのうちでは、その手のものが多い本書のなかでも特に寓意的な『武器』がベスト。

 少し長めのもののなかでは、ブラウンというよりブラッドベリ風の寂しい詩情だ、という感じの『ドーム』がお気に入り。

 原書では表題作の『地獄の蜜月旅行』は、月のクレーター「ヘル」を合流地点にして、月面ランデブー生活を送ろうとする米ソの男女宇宙パイロットの話だが「そういう」方向に行くとは思わなかった、と軽く度肝を抜かれた。

『闘技場』『スポンサーから一言』は名作という定評が先走って予断が付いて回った感もあるが、実作を読んで初めて感じる思いもあり、ちょっとしみじみ。

『かくて神々は笑いき』は、藤子・F先生の某作品の某エピソードの元ネタかな? 

 58年に原書が刊行された旧作SF短編集としては、良くも悪くもこんなものだろう、という手ごたえ。

 鬼才の傑作短編集とか妙な持ち上げ方しなければ、それなりに楽しめる。
(正直、タルいものもいくつか・汗。)

 たしか丸々一冊ショートショート集だった『未来世界から来た男(悪夢とジーゼンスタックス)』の方が単純に楽しめた気もするが、ソレは何十年も前の記憶なので、21世紀の視点の感想的には、当てにならない? 
 ブラウンの持ち味そのものは、たぶんこっち(本書)の方が、断然出ている気はする。

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