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ミステリの祭典

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いざ言問はむ都鳥

作家 澤木喬
出版日1991年01月
平均点7.50点
書評数2人

No.2 7点 虫暮部
(2019/12/30 10:46登録)
 分類学者の視点で世界を切り取る豊穣な筆致は、回りくどさも含めて大変心地良い。一方、掘り出される謎については、論理の面白さと同時に強引さも感じる。
 差し引きすると後者のほうが勝ってしまい、ミステリとしてはいまひとつ、なんだけどそう斬って捨ててしまうには惜しい魅力があった。

No.1 8点 Tetchy
(2011/09/13 21:51登録)
それぞれの短編で提示される謎とは一見なんともないようなもので「日常の謎」系の短編集だと思うだろう。そのジャンルの仕掛け人である東京創元社から出版されているから尚更だ。
しかし本書はそうではない。人の死が、犯罪が介在するミステリなのだ。
沢木敬が語り手となって進む物語は、上に書いた平井教授とその仲間達の日常風景と大学の学生達のエピソードと沢木の植物に関する薀蓄などが上手く絡み合って実にほのぼのしたタッチで語られる。その話に挟まれる小さな事件、もしくは事件とはいえない、ちょっと変わった出来事の裏に隠された真相は実に魂の冷えるような手触りをもっている。

解説の巽昌章氏が一番冒頭に語っているように、このたった220ページ強の短編集に込められた時間は実に濃密だ。

作者澤木喬氏が発表した作品はこのたった1冊だけ。恐らく作者の名もこの作品の存在すらも知らないミステリファンもいることだろう。ぜひとも多くの読んでもらいたい。現在絶版状態であること自体、勿体無い。

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