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ミステリの祭典

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サボイ・ホテルの殺人
マルティン・ベック

作家 マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー
出版日1975年01月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点 クリスティ再読
(2021/01/13 22:03登録)
マルティン・ベック6作目。今まで上司だったハンマルは退職し、代わって上司になったのが官僚上がりのマルム。現場が判らず政治性が強いために、どうもベックとはウマが合わない....ベックと言えば娘の独立を機にスキマ風が吹いていた妻とは別居。前作でチョンボしたスカッケはマルメに転勤、とシリーズも後半突入でいろいろ身分立場に変化が起きている。

スエーデン第三の都市マルメNo.1の格式を誇るサボイ・ホテル。そのレストランで会食中の男が、突然乱入してきた刺客に射殺された。警視総監直々の命でベックはマルメに出張する。殺された男はいろいろな事業を経営する実業家なのだが、武器密輸を陰で営む死の商人の疑惑がかけられていた。国際的な非合法ビジネスのトラブルに基づく暗殺なのでは?と余計な政治的な思惑がベックには重荷だった。爪楊枝の探し物名人モーンソンと組み、スカッケを配下にベックはアウェイのマルメで捜査を開始する.....

思うのだが、このシリーズの刑事たちが87と違う側面っていうと、刑事たちの個人的な欠点に容赦がない、という点かもしれない。ベックは心気症だし、コルベリは新人をいじめて結果的に因果応報を受けるし、メランデルは変人、ルンはグズ、ラーソンは乱暴者...でスカッケは身にそぐわない野望が滑稽なほど。もちろん長所はあるのだが、短所もすぐに指摘できるくらいに明確に描いている。エンタメらしい「理想化」が薄くて、こんな奴ら身近に居られても困る...なんて思わないわけでもない(苦笑)。その分、ヒーローでもアンチヒーローでもない、リアルな肌触りの警察小説になっているのが一番の特色。
前3回がベックの配下の刑事たちの話が中心になったが、本作では妻と別居し、マルメに出張のベックにフォーカス。独身を楽しむベックに食欲も戻るのがゲンキンなくらいのもので、ちょいとしたロマンスもあり。事件そのものよりも、そっちの方が面白い。

No.1 6点
(2014/07/02 22:34登録)
本作の殺人事件が起こるサボイ・ホテルはストックホルムではなく、スウェーデン南部のマルメにあります。この町から最も近い大都会は何と言ってもデンマークのコペンハーゲンで、海を隔てること30km程度。マルメからストックホルムに短時間で行くには、外国経由で飛行機を利用するのが当然なのです。殺されたのが経済界の重要人物ということで、マルティン・ベックが単身、マルメに出張して捜査の指揮を執ることになります。ただしストックホルムでも捜査は行われ、お馴染みのメンバーが活躍します。
今回の特徴は、対比でしょうか。被害者を始めとする金持ちと、彼等に搾取される側との対比が中心で、あとがきにも社会派的作品であると指摘されています。しかしそれだけでなく、常連警部たちの有能さと、彼等に命令されて働く制服警官たちの間抜けぶりも対比されているのですが、これはあまりに型にはめすぎている感じがしました。

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