嘲笑う闇夜 バリー・N・マルツバーグとの共著 |
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作家 | ビル・プロンジーニ |
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出版日 | 2002年05月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 6点 | 人並由真 | |
(2020/04/16 03:13登録) (ネタバレなし) ニューヨーク州の一角にある田舎町ブラッドストーンで、謎の殺人鬼が幅広い年齢の女性たちを襲う。「切り裂き魔」とマスコミに命名された殺人鬼はすでに3人の女性を切り刻み、その遺体に小さなダイヤ型の傷痕マークを記していた。27歳の女性で同地の出身である雑誌の特派員ライター、ヴァレリー・ブルームは、取材のために10年ぶりに故郷に帰還。だがヴァレリーに同行した、アマチュア犯罪研究家の精神科医師ジェイムズ・フェラーラは「<切り裂き魔>は潜在的・発作的な二重人格者で、平時は当人も自分が殺人鬼であることを全く自覚していない可能性がある」と主張した。やがてブラッドスートンの町に、新たな死の気配が。 1976年のアメリカ作品。名無しの探偵オプものを初期三部作で小休止させた時期のプロンジーニが発刊した、小説家志望の若手バリー・N・マルツバーグと組んでものにする合作路線の第一弾。 わかりやすい構成と多視点描写を活用し、日本語の文庫版で480ページ以上をほぼ一気に読ませてしまう。このスピード感はまずは結構。 さらに作中の登場人物の大半が殺人鬼「切り裂き魔」である可能性も早々と語られ、つまりこの嫌疑を受けないのは、リアルタイムで殺害シーンが描かれる被害者キャラのみ……? ということになってしまう。この趣向そのものは、なかなかパワフルで好ましい。 とはいえ終盤の荒っぽい仕上げは、まあ……B級のトリッキィスリラーとしてはこんなものかしらね(苦笑)という感じ。 ちょっとよく読むと、さりげなく「え?」というところもあるのだが、そこら辺も仕掛けだけしておいて、あったほうがいい演出をサボった印象である。 決して完成度の高い、あるいはよくできた作品とは思わないけれど、一方で読まないで放っておくと気になるよね、こーゆーの。その意味ではある種の成功した作品といえるかも。 (ただやっぱり最後まで読んで、その上で……ムニャムニャ。) |
No.1 | 6点 | kanamori | |
(2010/09/20 16:19登録) 片田舎の女性連続切裂き魔を扱ったサイコ・サスペンス。マルツバーグとの合作第1弾。 文庫解説の折原一が書いているが「木製のジェット・コースター」という形容がピッタリで、カーブの毎にガタピシ揺れてゴールまで壊れずに到着できるのかという危うさが見え隠れするプロットでした。 後の「裁くのは誰か?」同様に、切裂き魔を含む複数の人物の多視点でそれぞれの内面描写を入れながら、場面転換を多用したスピード感ある展開で楽しめた。新聞の見出し記事で終えるエンディングはなかなか衝撃的だ。 |