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ミステリの祭典

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泥棒は選べない
泥棒バーニィ

作家 ローレンス・ブロック
出版日1980年04月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 5点 nukkam
(2024/08/13 11:46登録)
(ネタバレなしです) 本格派推理小説以外のミステリー作品に関心の極めて低い偏屈読者の私にとって米国のローレンス・ブロック(1938年生まれ)はマット・スカダーシリーズのハードボイルドやエヴァン・タナーシリーズのスパイ・スリラーのイメージが強くてほとんど読んでおりません。バーニィ・ローデンバーシリーズについても主人公が泥棒ということで冒険スリラー系か犯罪小説系かと思っていましたが、本格派として評価している感想投稿がありましたので1977年発表のシリーズ第1作である本書を読んでみました。本書ではもうすぐ35歳を迎えるバーニィの1人称形式で語られています。謎の依頼人に頼まれてブルーの箱を盗みにアパートメントの一室に侵入しますが、そこへ警官が現れた上に死体まで発見され、慌てたバーニィは警官に体当たりして逃亡するという巻き込まれ型サスペンス風な展開になります。犯人当て本格派としては登場人物の人数が少な過ぎる感がありますが、依頼人の正体やブルーの箱はどこにあるのかという謎解きを絡めています。内容は全く異なりますがレックス・スタウトの「赤い箱」(1937年)の向こうを張って「青い箱」というタイトルでもよいように感じました。主人公が泥棒である設定を謎解き推理に絡めている点は巧妙だと思います。逃亡犯としての危機感描写が物足りないのと通俗スリラー色の濃い文章は読者評価が分かれるかもしれません。

No.2 7点 Tetchy
(2013/12/23 19:31登録)
まず驚くのはその軽快な筆致。とてもマット・スカダーシリーズと同じ作家が書いたとは思えないほど、軽妙でユニークだ。特に絶妙なのは会話だ。突然話があらぬ方向に向かうバーニイと、彼を取り巻く人物たちのやり取りは洒落た漫才のようで実に面白い。しかもジョークを持ち味にするキャラクター―例えばネルソン・デミル作品のジョン・コーリー―にありがちな嫌味が全くなく、逆にバーニイの人柄の良さが滲み出てくる。

バーニイのへらず口として語られる彼の過去の失敗談や逃亡中に間借りする知り合いの俳優についての解説が巧みに事件の要素として関わってくるのは驚いた。単なるエピソードとして読み過ごしていると読者は何のことだっけ?と呆気に取られてしまうだろう。
これは謎の依頼人がハリウッド映画によく出てくる名もない脇役を務める俳優だったことも関係しているのかもしれない。数ある映画を観ていて見過ごしがちな存在ながらも、ある人やある場面では特定の意味を持った存在となるというのは、この単なるエピソードも事件の重要な情報になり得る、つまり不要な物などはないのだということを暗示しているように私は感じた。

正直第1作目の本書は最初の導入部が実に面白かったせいもあり、途中バーニイが身動きとれずにいる辺りは中だるみを感じてしまったのは否めない。が、さりげない手がかりや伏線と云った意外に本格ミステリな趣向が凝らされており、正直最後の真相には感心してしまった。

No.1 6点 mini
(2009/08/22 10:09登録)
ローレンス・ブロックは読みたい作家ではあったのだが、私が酒が苦手なのでマット・スカダーものには手が出なかった
そこで作者を代表するもう一つのシリーズ、泥棒バーニー・ローデンバーを読んでみた
ローレンス・ブロックは文章が独特で、流れるような文体は決して読み難くは無いのだが、ちょっとひねくれた注釈をいちいち差し挟む感じは好き嫌いが分かれるかもしれない
ミステリーとしては期待以上で、私は見破ってしまったのだが、本格しか読まないような読者が読んでも楽しめるような意外な真相解明が待っている
と言うか探偵役の職業が泥棒という設定だけで、半分は本格として書かれているだろ、これ
ブロックのようないかにもな職人気質な作家は敬遠されがちだが、いやどうして良い意味での職人技だし、今やアメリカを代表する現代ミステリー作家という一般的評価は全く妥当だ

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