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ミステリの祭典

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名門
競馬シリーズ

作家 ディック・フランシス
出版日1984年01月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 tider-tiger
(2016/10/29 12:17登録)
『ゴードン・マイクルズがいつもの服装のままで噴水の池の中に立っていた』
書き出しから異様な状況で物語は幕を開けます。いきなりグイグイきそうな予感しますが、実はかなりスロースターターな作品。450頁超のわりと長めの作品なのに前半は伏線を張りつつ主人公の仕事(銀行家)や日常の話が続く。冒険/スリラー/スパイ小説などではなく、アーサー・ヘイリーでも読んでいるのではないかと錯覚するような場面も出てきます。個人的に背景や人物をじっくりと描き込んでくれる作品は好きなのですが、さっさとミステリを始めろと感じる方もいるかも。とても地味な作品で、フランシスの典型的な作品でもありません。が、裏名作だと考えております。
主人公は銀行家で常識的な人物ですが、やはり、紛うことなくフランシスの嫡子です。負けず嫌いで危険に自ら飛び込む。肝腎なところで『常識が負ける』のです。結局フランシスなんですよね。あれ? やっぱり典型的な作品なのか? 
とにかく、フランシスの主人公って内面的にはみんな同じような感じなんですよね。
主人公の造型だけではなく、プロットもある種の個性というかマンネリ感があってさほど凝っているわけではありませんし、職業のヴァリエーションがマンネリの回避にかなり寄与していると思われます。前述のアーサー・ヘイリーを読むような楽しみ方もできるのです。
※背景の描写とプロットの緻密さはアーサー・ヘイリーの方がはるかに上ですが、アーサー・ヘイリーも人物が金太郎飴といわれがちな作家で、意外と共通点があるような気がします。アーサー・ヘイリーの作品は謎の提示があって、原因究明、解決といったプロセスが繰り返されますが、こういう部分はミステリ読者にも訴求力あると自分は思うのですが、どうでしょう?
話を名門に戻します。すみません。
地味、スローペースの他、本作の特徴は。
犯人は予測が付くと思われます。ハウダニットが読みどころですね。簡単なことだけに怖ろしい。
フランシスはプロットに予定調和的なところがありますが、本作はそれをちょこちょこと裏切るような展開が見られます。
ラストがちょっとなあ、私はあまり好きではありませんでした。
それから邦題の名門、うーん、そういう話ではないような。確かに主人公も本作に登場する最重要馬物も名家の出ではありますが。

No.1 7点 kanamori
(2010/11/07 20:28登録)
曾祖父の設立した銀行の融資部で働く主人公が、融資した競走馬生産牧場での奇形馬出産に絡む殺人事件に巻き込まれるというストーリー。
原題は、Banker(銀行員)とそっけないが、物語も終盤近くまでは地味で、いかにも英国スリラーという感じです。
サブストーリーのプラトニックな恋愛と、苦難の数々による主人公の成長の物語によって、ラストに深い感銘を与えるいつものフランシス節が堪能できました。

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