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ミステリの祭典

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見知らぬ者の墓

作家 マーガレット・ミラー
出版日1988年05月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 6点 ボナンザ
(2022/09/21 19:54登録)
驚きの結末が待つ怪作と思うと残念だが、そこに至るまでの登場人物たちの回りくどいまでのやり取りを嘲りながら読むのが吉。あの真相が各人物の言動にどんな影響を与えていたかはあえて描写しないところに逆に凄みを感じたり。

No.2 6点 tider-tiger
(2018/11/13 23:43登録)
~デイジーは富裕で優しい夫に守られて何不自由のない生活を営んでいたのだが、ある日、夢の中で自身の墓を見てしまう。デイジーが没したのは1955年12月2日となっていた。四年前だった。ただの夢だったが、妙に生々しく、この夢はデイジーの不安を掻きたて、苛んでいく。
この日、自分の身になにか大きな事件でもあったのだろうか。
デイジーの記憶には特になにも残っていない。
そこで周囲の制止を振り切って、探偵の助けを借りて、デイジーは失われたその日を再構築しようと試みる。

1960年アメリカ作品。謎は魅力的だが、その解は期待はずれ(もしくは日本人には理解し難い)ではないかとも思う。それでもミラーの地力で非常に読ませる作品に仕上がっている。主要な数名のみならず作中人物の多くがこれほど立体的に浮かび上がってくる作品は珍しい。それらの人物がストーリーと見事に融合して、説得力のある人間模様が描き出されている。それほど派手な動きはないもののリーダビリティはそこそこ高い。この前書評した『殺す風』は普通小説のようなミステリだったが、本作はミステリ要素はあるものの普通小説に近い。個人的には『殺す風』よりも本作の方が好き。
※ミステリ的な面白さという点から採点は『殺す風』に軍配を上げます。
各章の冒頭に謎の文章が書かれているのだが、miniさん御指摘のとおりこの仕掛けはあざといと考える方もいるかもしれない。私はけっこう好きだが。
サプライズエンディングを志向する作家というイメージが強いが、正直なところ自分はミラー作品で心底驚いた記憶はない。驚きなくとも充分読ませる力のある作家だと思う。

精神分析学の影響が色濃い作品だが、そういった知識がなくとも問題なく読める。ただ、そのことが本作の大きな瑕疵になってしまっているようにも思える。普通に考えれば、デイジーが四年前に起きたその出来事を忘れてしまうとは考えにくいからだ。だが、精神分析学的には起こり得ることと考えられている。本作は夢の啓示に従って現状を打破し、自分の希望を叶えようとする話とも読める。

ロスマク、マーガレット・ミラー、二人とも家庭の悲劇を描くのを得意としており、嫌な話、人間不信に陥るような話も多い。そのわりに二人とも文章の端々に妙に無邪気といおうか、人間を信じたくてたまらない、そういう心性が垣間見えるのが面白い。

No.1 7点 mini
(2015/09/01 09:59登録)
* 私的読書テーマ、”生誕100周年作家を漁る”、第8弾マーガレット・ミラーの4冊目
以前に書評済だったがテーマに合わせて一旦削除して再登録

ロス・マクドナルド夫人がマーガレット・ミラーで、たしかにロスマクの神経症的な作風はミラーを思わせるものがある
ミラーは初中期は仕掛けのあるサスペンス小説という感じだったが、後期には私立探偵的な人物を配置してロスマク風に変わってきている
ただし私立探偵が必ずしも主役とは限らず、この作品も探偵は結局は狂言回しの進行役で主役はヒロインの女性だ
はっきり私立探偵自身が主役と言い切れる「まるで天使のような」は、ミラーとしたらむしろ例外的な異色作に思える
ミラー後期の代表作の一つと言われるこの「見知らぬ者の墓」では、MC役の私立探偵の目を通してヒロインの潜在意識の奥に潜む謎を探っていく
ヒロインの夢の中に自身の墓が登場し、墓碑銘に彼女の4年前の死亡日が記されているというとびきりの謎を持ちながら、ミラー独特の筆致で単なる謎の為の謎に陥るのを免れている
一方で各章の冒頭に記された手紙に関するかなりあざとい仕掛けには驚くと同時に読者によって好き嫌いが分かれそうだが
世のネット書評では謎は強烈だがこの真相にはがっかりてな意見も散見されるが、本格派作品ではないわけだし、プロット全体を通しての仕掛けみたいな作だからこれでいいんじゃないかなぁ

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