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ミステリの祭典

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猫はブラームスを演奏する
シャム猫ココ

作家 リリアン・J・ブラウン
出版日2001年06月
平均点4.67点
書評数3人

No.3 5点 tider-tiger
(2020/03/30 06:01登録)
~新聞記者ジム・クィラランは母親の古い友人であるファニー伯母さんの招待を受けてムースヴィルの田舎町でシャムネコたちと休暇を取ることにした。ファニー伯母さんはたいそうな資産家で、所有しているコテージを一棟使わせてくれることになっている。ところが、平和そうに見えたこの田舎町で次々と奇妙なことが起こる。悪臭騒ぎ、盗難事件、そして、シャムネコのココがカセットデッキを勝手に操作してブラームスの音楽がコテージ内に響く。だが、そのテープには音楽だけではなく、怪しい会話が録音されていた。~

1987年アメリカ。シャム猫ココシリーズの五作目。miniさん御指摘のとおり、シリーズの舞台やクィラランの生活が大きく変わる転換点となる作品だが、なぜか日本ではずいぶん遅れて刊行される。別に本作が質的に劣っているとかそういうことではないと思う。ミステリとしては4点以下の作品だが。
邦題は『猫はブラームスを演奏(play)する』だが、ココは演奏をするわけではなくて、カセットデッキの再生(play)ボタンを押すだけである。

このシリーズは総じてミステリ的に優れたものではない。暇つぶしに事件記者が綴る村の事件簿に目を通してみるといった気楽な姿勢で臨みたい。
次から次へとガツガツ読みたくなるようなシリーズでもない。ちょこちょこと買いおきしておいて、年に一冊くらい読む。そんな風にのんびりと付き合っていきたいシリーズである。個々の作品のクオリティはどうでもよく、死ぬまでに全作品読んでおきたいと思っている。
若い人よりもある程度年を食った人にお薦めしたい。実に味わいのある作品集だと思う。

若い頃はこのシリーズの表紙絵はあまり好きではなかった。まんが日本昔話に登場した化け猫みたいなのまである。だが、今はかなり気に入っている。

No.2 4点 nukkam
(2016/08/19 14:11登録)
(ネタバレなしです) シャム猫ココシリーズ前作の「猫は殺しをかぎつける」が1986年出版ながら書かれたのは1960年代だったのに対して、シリーズ第5作となる1987年発表の本書は恐らく正真正銘1980年代に執筆されたと思われます。そのためかどうかわかりませんがクィラランにとって人生の転換期ともいえる出来事が用意していますのでシリーズファン読者には重要作でしょう。もっともミステリーとしては残念ながら以前の作品からの改善は見られなかったです(笑)。日常生活的な謎解き(野生動物の仕業だったとか)が中心になっていてなかなか殺人事件が発生しない展開も少々ダレ気味です。初めての土地で戸惑っているクィラランはよく描けています。

No.1 5点 mini
(2013/04/25 09:57登録)
本日発売の早川ミステリマガジン6月号の特集は、探偵は“ここ”にいる、再び
大泉洋主演の映画2作目の前宣伝も兼ねているのだろう、連動書評はもちろんシャム猫シリーズ、どちらも”ココ”が重要です
あ~あ、またやっちゃったよ

* 1913年生まれ、今年が生誕100周年作家を漁る、第2弾はココシリーズのリリアン・J・ブラウンだ
昨年亡くなったのに今年が生誕100周年、という事は高齢だったんだな、合掌

ココシリーズは初期4作がずっと前に書かれたあと、年月を経た後に第5作以降が書かれた
初期4作では大都会シカゴを舞台にした都会的で小粋な話だったが、第5作目以降は舞台をムース郡という半観光地の地方に移して展開される
その辺の作者側の事情は知らんけど、シリーズの中断期間にコージー派というジャンルが確立されたという要素もあるんじゃないかなぁ、初期4作が書かれたのが1960年代で第5作が1987年、一方でシャーロット・マクラウドのシャンディ教授シリーズの第1作目が1978年だし
つまりだ、コージー派の特徴の1つである、限られたコミュニティー地域の中で起こる事件という流行に乗っかったという理由も有りそうなんだけどなぁ

さて、最初に翻訳刊行されたのが1作目ではなく第4作であるなど、よくよく刊行順に因縁が付き纏うシリーズだが、主人公クィラランが都会からムース郡に引っ越す事になるターニングポイント的な第5作と6作目の翻訳が何の事情かずっと後回しになったのである
初期4作の後、既にムース郡に定着した事になっている第7作目をいきなり読まされた当時の読者はきっと目が点だったろうな(笑)
今ではシリーズ全作が揃っているので、シリーズ未読の読者は初期4作の後は順番として必ず第5作の「ブラームスを演奏する」を読むべきである、折角現在では順番通りに読めるのだから
と、説明が長くなったが仕方がない、この第5作目だけはそうした翻訳された順番という事情を考慮しなければ書評出来ない性質の作だからね

で、やっと内容だが、初期4作とは書かれたのが20年ものブランクが有った割には、最大の特色である登場人物達の粋な会話は健在なので安心して読める
前作「殺しをかぎつける」みたいな特異なトリックとかを期待しなければまあまあ面白かった

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